第3話

③ 喪失の証拠
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2026/02/10 09:09 更新

 元の世界に戻れていたなら昨日、ヤシロが俺を呼び出すはずだった。
 でも、ヤシロは来なかった。
 だったら、ヤシロになにかしら変化が起きていると考えるだろう。
 ヤシロから状況を聞き出すため、俺はヤシロの教室、高等部1年A組に向かった。
 教室に入ったら、まずヤシロの席に行った。でも、そこには金髪つり目の男子生徒がいた。
 教室を見渡すと、ヤシロらしき人物はいない。
花子くん
花子くん
(そうだ、名簿!)
 俺は、自分が幽霊なのをいいことに、教卓の名簿を見た。
 そこに、『八尋寧々』の文字はなかった。
 ヤシロの席だった場所には、23番だったヤシロの一つ前、22番の『山吹』っていう奴が座っている。
 ついでに、『赤根葵』の文字も見当たらない。
 もう一度教室を見回すと、
蒼井茜
蒼井茜
は…?
 メガネを拭いていた一番と目があった。
 一番について行って教室を出ると、階段の踊場で一番が振り返った。
蒼井茜
蒼井茜
何しにここに来たんですか、七番様。八尋さんもアオちゃんもいないのに。
花子くん
花子くん
え……?
蒼井茜
蒼井茜
まさか知らなかったんですか?八尋さんは中2の秋、アオちゃんは中3の冬に、…って、七番様には関係ないでしょうね。とりあえず、僕のクラスには七番様の探し人はいませんので。さっさと失せろ。
 一番は、俺が口を挟むまもなく言いきると、さっさとメガネをかけて教室に戻ってしまった。
 だけど、一番の行動のことなんて、全く頭に入って来なかった。
 一番たちによって改変された世界。
 ヤシロとここの情報共有なんてできない。
 この世界に、ヤシロは存在すらしていなかった。

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