元の世界に戻れていたなら昨日、ヤシロが俺を呼び出すはずだった。
でも、ヤシロは来なかった。
だったら、ヤシロになにかしら変化が起きていると考えるだろう。
ヤシロから状況を聞き出すため、俺はヤシロの教室、高等部1年A組に向かった。
教室に入ったら、まずヤシロの席に行った。でも、そこには金髪つり目の男子生徒がいた。
教室を見渡すと、ヤシロらしき人物はいない。
俺は、自分が幽霊なのをいいことに、教卓の名簿を見た。
そこに、『八尋寧々』の文字はなかった。
ヤシロの席だった場所には、23番だったヤシロの一つ前、22番の『山吹』っていう奴が座っている。
ついでに、『赤根葵』の文字も見当たらない。
もう一度教室を見回すと、
メガネを拭いていた一番と目があった。
一番について行って教室を出ると、階段の踊場で一番が振り返った。
一番は、俺が口を挟むまもなく言いきると、さっさとメガネをかけて教室に戻ってしまった。
だけど、一番の行動のことなんて、全く頭に入って来なかった。
一番たちによって改変された世界。
ヤシロとここの情報共有なんてできない。
この世界に、ヤシロは存在すらしていなかった。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!