あなた「いい?見学だけだよ。練習の邪魔はしないって約束だからね」
猛「わかってるよ!昨日さ、徹みたいな威力のサーブする人見つけたんだ〜。すっげーんだぜ!!」
北さんに電話をし、練習の邪魔はしないと約束をしてバレー部の見学をさせてもらえることになった
すでに興奮し「早く早く〜」としきりに私の腕を引っ張る猛
あなた「あ、ちょ、ちょっと待ってよ……」
猛に引っ張られるままに早歩きで運動公園へと向かう
・
____________キュキュ、ドゴォン!
「ナイスキー!」
____________バンッ!!
「ナイスレシーブ」
体育館に近付くとバレー部が練習を始めている音が聞こえる
入り口の扉の隙間から体育館の中を覗く
猛「ほらほら「バンッ!」とか「ドンッ!!」って、いかにも強そうだろ?」
まるで自分の事を自慢するかのように得意気に教えてくれる
あなた「だね」
目線は体育館の中へ向けたまま答える
あなた「ねぇ猛、さっきも訊いたけどバレー好きなの?」
猛「ん〜…。好きかどうかはわかんないけど、やってみたい!とは思う。だってさー、アレできたらカッコイイじゃんか!!」
誰かを探しているのか、さっきから首を左右に振りながらキョロキョロと視線を泳がしている
猛「徹にさ「教えてくれ」って頼むんだけど「お前にはまだ無理」って教えてくれねぇんだよな〜。それよりも、徹の事を呼び捨てで呼んでるのがどうとか文句言うしさー」
口を尖らせながら猛は喋り続ける
ふ〜ん…。バレー好きなんだ
甥っ子の横顔を見ながら、可愛いなコイツと頭を撫でる
猛「____________っ、//!?な、何だよ?!いきなり」
撫でられた頭を自分の手で押さえつけながら少し頬を赤らめて私をチラリと見上げる
あなた「いやいや、可愛いな〜。と思ってね」
ってか、さっきからトオル、トオルって……誰だっけ?
猛の顔を見つめながら考える
あぁ、そうだ。そう言えば……確かお義姉さんの弟さんだったかな?が、そんな名前だった気がする
私と1コか2コしか歳が違わなかったハズ
まぁ、うろ覚えの記憶だけど____________。
お兄ちゃん達の結婚式で1回会っただけだし……しかも、結婚式ってあれ何年前だっけ?
「誰を見てるん?」
あなた「____________っ、!?」
考え事をしていると、突然背後から話しかけられて驚いた
肩を竦めながら、ゆっくりと後ろを振り返る
あなた「あ、治くん…。びっくりした〜」
そこには大量のドリンクボトルを抱えた治くんが立っている
「お〜い、サム〜。ったくドリンク作りにどんだけ時間かかってるんや?」
遠くから治くんを探す声がする。その声は徐々に近付いてくる
「ったく、遅いねん!あいつは……」
治「あ〜?ドリンクならできとるわ」
「ったく、何しとんねん!」
その声と共に侑くんが扉の隙間から顔を出す
侑「……ってあなた!?!?」
私の姿を確認するなり目を見開く
あなた「あ、甥っ子が練習観たいって言うから。北さんにお願いしたの」
猛「ふぇっ!?おんなじ顔…?」
猛が治くんと侑くんの顔を交互に見ながら私の手を掴んでくる
侑「俺ら双子やねん。何や、双子見るの初めてかいな?」
「侑、こんな所で何してるの?治居た?」
侑「おん。ここに居ったわ」
侑くんの後ろから角名くんが顔を出す
角名「あ、間宮さん……?」
侑「練習観に来たらしいわ」
「お前ら、何しとるん?」
あなた「あ、銀島くん」
銀島「ま、間宮さん!?」
「何や?何や?」
「どないしたん?!」
私達の話し声を聞きつけてバレー部の皆が何事かと集まって来た
「こんな所に居ったんか?」
あなた「____________、あ、…北さん//」
北「「練習観に来る」言うとったのに、なかなか来おへんから。気になっとったんや。そんなとこやのうて、中入り」
僅かに頬を緩めるその笑顔に、私もつられて笑顔になる
あなた「あ、でも……」
北「大丈夫や。監督には「ちびっ子らが見学に来る」言うて許可は貰っとる」
ちびっ子らって……
隣の猛を見下ろしながら、同類に扱われた事に若干凹む
角名「ほら、北さんも言ってるから中に入れば?」
角名くんが入り口の扉を開けてくれた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!