第18話

一年後の君へ、僕はまだ恋をする
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2026/02/11 02:18 更新
改札前で彼女はすでに待っていた。
白いワンピースに薄手のカーディガン、いつもより少しだけ大人びた雰囲気で、こちらに気づくと大きく手を振る。
「遅い!」
「集合時間ぴったりだよ」
「心構えの問題ですーー!!」
意味が分からない。
そう思いながらも、僕は彼女の隣に立つ。
「それで、どこ行くの」
「県外!!!!」
「雑すぎない?」
「いいからいいから。電車乗るよ」
切符を改札に通し、並んでホームに向かう。
休日の朝の駅は人が多くて、少しだけ落ち着かない。
「ねえ」
「なに?」
「こうやって二人で出かけるの、初めてだね」
「そうだね」
「緊張してる?」
「少し」
「私も」
意外な答えだった。
彼女はいつも楽しそうで、迷いがないように見えるから。
電車が来て、並んで座る。
窓の外に流れていく景色を眺めながら、彼女が言う。
「実はね、前から行ってみたかった場所があるんだ」
「どんなところ?」
「温泉街。日帰りだけど」
「遠くない?」
「大丈夫。君となら」
その言い方はずるいと思う。
返事に困っていると、彼女はくすっと笑う。
「安心して。無理はしないから」
「それならいいんだけど」
電車が県境を越えたあたりで、彼女は窓に顔を近づけた。
「ほら、空気違わない?」
「分からないな」
「もー!感覚で楽しむものなの!」
駅に着き、改札を出ると、温泉の微かに混じっていた。
人の多い街を歩きながら、彼女は足取り軽く進む。
「ねえ、さ」
「うん」
「この前の教室のこと、まだ気にしてる?」
「……少し」
「じゃあ今日はね」
「今日は?」
「噂もクラスも忘れる日!!」
彼女は振り返って、真っ直ぐ僕を見る。
「今は、私と君だけでいいでしょ?」
逃げ場のない笑顔だった。
僕は小さくうなずくしかない。
この休日が、ただの楽しい一日で終わるのか。
それとも、何かが変わる一日になるのか。
今の僕には分からない。

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