第14話

一年後の君へ、僕はまだ恋をする
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2026/02/10 11:52 更新
「ねえ、帰る前に寄り道してもいい?」
突然彼女がこんな事を言ってきた。
「帰りの会がもうすぐ始まる帰る直前のタイミングで何を言う出すのかと思ったら本当に君」
「いいの、ちょっとだけ」
話を遮られた。
僕は知ってる。彼女には勝てない。ついていくしかないのだ。帰りの会が終わってすぐ彼女がこちらにきた。
彼女は無邪気に笑いながら手を引く。
周りの視線にはまだ慣れない。
僕は少しだけため息をついた。
向かった先は、学校近くの小さな喫茶店。
窓際の席に座ると、甘い香りが鼻をくすぐった。
「何食べるの」
「パフェ!」
「いきなり??」
「うん、今日はどうしてもパフェ!」
彼女はメニューを眺めるふりをして、結局一番大きくて派手なやつを指差した。
「これにする」
「……本当に大丈夫?」
「大丈夫!食べるのも見るのも楽しみなの」
「君は生粋の大食いファイターなんだね」
「レディーに失礼な!!お黙り!!」
僕は黙って頷くしかなかった。
どうせ断っても、最後は彼女の勝ちになるのが目に見えている。
注文を終え、パフェが運ばれてくると、彼女の目は輝きを増した。
「わー、すごい!」
「……派手だ」
「可愛いから!」
彼女はスプーンを手に取り、僕の目の前に一口差し出す。
「食べてみて」
「いらない」
「もしかして関節キスが良かった!?」
「自意識過剰もここまでくれば一つの芸だね」
彼女は頬をふくらませる。
「つまんない人」
満面の笑みを浮かべてパフェを頬張る彼女は
中々に見応えがあった。
二人で少しずつ口を動かすうちに、自然と会話が続いた。
「ねえ、なんで君、そんなに無表情なの?」
「無表情じゃない」
「でも、怒ったり笑ったり、ほとんどしないじゃん」
「別に怒らないし、笑いたくなければ笑わないだけ」
「変な人!!」
外の空は少しずつ茜色に染まっていた。
「そろそろ帰らなきゃね」
「うん、でももうちょっとだけ」
彼女はスプーンをもう一度口に運び、僕を見た。
その視線には、明るさと、少しのいたずらっぽさが混ざっている。
店を出ると、夕暮れの風が二人の間を吹き抜けた。
「次からはちゃんと時間考えてね」
「えー、でも楽しかったじゃん」
そこで僕は気付いた。たしかに今日は楽しかった。
なんだか負けた気分なので、彼女を睨む。
彼女はにっこり笑い返した。

やはり僕は彼女には勝てないようだ。

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