第13話

一年後の君へ、僕はまだ恋をする
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2026/02/10 09:11 更新
放課後、図書室を出ると、外はすでに少し夕暮れの色に染まっていた。
「帰る方向、一緒だよね?」
僕が聞くと、彼女は小さくうなずく。
「ねえ、コンビニ寄ってもいい?」
「またアイス?」
「うん、でも今日は新しいの出てたんだもん」
彼女は迷いなく小走りでコンビニに向かう。
僕は少しだけあきれながら、後をついていく。
店内は薄暗く、冷蔵ケースの光が二人の顔を照らす。
「どれにしようかなー」
彼女は指をさしながら悩むふりをして、結局迷わず一番派手なパッケージを取った。
「ほら、これ!」
「……派手だね」
「いいの、可愛いから」
何も買わなかったらまた彼女に奢られる気がして、僕もアイスを買わざるを得ない。

アイスを手に取り、二人で歩き出す。
沈黙はない。
歩くスピードも、会話のテンポも、いつの間にか合っている。
「ねえ、君ってさ」
「ん?」
「家、何時くらいに帰るの?」
「六時前後かな」
「ふーん、早いんだね」
「普通じゃない」
「そうかなー。私はちょっと遅め」
「そう」
彼女は楽しそうに笑うけれど、その笑顔の奥に、何か言えない秘密があるのかもしれないと思うと、僕は胸の奥がざわついた。


次の日、教室に入ると、昨日までの夕暮れとは違う光が差し込んでいた。
彼女はすでに机に座り、ノートを広げている。
僕が席に着くと、彼女はにっこり笑った。
「おはよう」
彼女の席は僕の隣。彼女の気さくな性格から考えれば、性格が正反対の人間である僕に挨拶をしてきても不思議ではない。
「おはよう」
自然な挨拶が交わされる。
今日は、図書委員の仕事がない。正確に言うと、なくなったのほうが正しい。それは彼女も知っている
だから今日はこれ以上、関わることもないのだろう。

僕は昨日の帰り道での事を思い出す。
彼女の仕草や笑顔が頭から離れず、少しだけ心がざわついていた。
授業が始まると、彼女は真剣でありながらも楽しそうな顔で先生の話を聞いている。
周囲のクラスメイトは何も知らない。
彼女の秘密も知らない。

昼休みになり、僕が1人で購買にいこうとしたら、
彼女がついてきた。なんで????
周りの男どもの視線が痛い。
そして当然のように話しかけてくる。
あー終わった。僕虐められる。
「昨日のアイス、美味しかったね!!」
「うん」
「あの新作、当たりだった」
笑いながら話す彼女を見ていると、
本当に何も考えていないんだなとわかった。
僕はこの後起こるであろう未来を想像するのを辞め
彼女と共に購買へ向かう。
どうか、死にませんように。
男どもに、殺されませんように。
そんな切実な願いを心のなかで唱え続けながら。

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