第2話

(駄作) 【君がいつも仰ぐ空へ】
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2023/04/11 12:53
アマルside
夏の日。

蝉の大合唱の合間に聞こえる啜り泣く声と嗚咽。
今日もか。
向かいのアパートの一室を見る。
そう遠くないので、ここまで泣き声が聞こえるのだ。

泣いていた当事者は、今日もまた、空を仰いで泣いている。
儚く散ってしまいそうな表情が無性に俺の理性を震わせて、なんとなく取った紙にメッセージを書いてくしゃくしゃに丸めたそれを投げつける。


コテ、と効果音がつきそうな程100点満点のリアクションをした向かい側の少年は、くしゃくしゃの紙を広げて、暫くしてふと俺の方に視線を向けた。
[ な ・ く ・ な ・ よ ]
口パクでそう伝える。

数秒停止した彼は、意味を理解したのかぶわっと目に涙を溜めた。
俺が戸惑っていると、口パクで返された。
ぷり。
[ は ・ っ ・ ぱ ・ あ ・ り ・ が ・ と ・ う ]
瞬時に気づいた。
俺の犯した一つの失態に。




あのくしゃくしゃに丸めた紙に紛れたであろう葉。





赤い薔薇の葉。




































貴方の幸福を願う。








いつも泣きながら空を仰ぐ君は、きっと不幸にぶち当たっているんだろう。

無意識に買っていた赤い薔薇。

渡すつもりなど毛頭なかったが、この部屋にある葉っぱなんて薔薇ぐらいしかない。
赤い薔薇の花言葉は『愛』。
赤い薔薇の葉は『幸福』。

どちらも間違いではない。
嬉しそうに手紙を振り回すお前を見ると、俺の不幸も飛んでいった気がした。













【君がいつも仰ぐ空へ】。




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