円形回廊に等間隔で並ぶドアの前を、誰かが歩いていく。
彼は携帯を見ると、小さく舌打ちをする。
その携帯に写っているのは、現在行われている試合のライブ映像だ。
彼は携帯をポケットにしまい、先程よりも速度を上げて歩き出した。
やがて1つのドアの前で立ち止まる。
彼は3回、速くノックをしてからドアを開いた。
中にいた数人の剣闘士は彼を振り返る。
どうやら準備中だったらしい。
馴れ馴れしい彼に、剣闘士は怪しむような顔をした。
そう言って彼はフードを取る。
不敵な笑みを浮かべ、細められた彼の目は紺青だった。
古参の者であれば知っているが、箝口令が敷かれたのはトップが代わってからだ。
しかし実力主義の組織で、その『夢見』がトップに立てる理由は何だ?
誰だって思う。そして、それに答えが出る事は無い。
なぜなら、彼がその事を誰かに見せることも、話すことも極力しないから。
【輪廻】
放たれたその一言を皮切りに、剣闘士たちの体がホログラムのように歪む。
境は相変わらずの笑みを湛えていた。
消えていく彼らの目に、空色に光る瞳が映る。
真夏の雲一つ無い青空のような、眩しい光だった。
無邪気な笑い声と共に真っ黒なポニーテールが揺れる。
彼女がもたれているドアの内側から、くぐもった声が聞こえた気がした。
「___誰が嘘つきだって〜?開けて?」
彼女はその声に耳を貸さず、目を閉じる。
その視界に流れるおびただしい量の光景の中から1つを選び取った。
その写真のような光景は、ノイズがかかっていて何が映されているのか分からない。
到底似合わない一言だけ言うと、目を開け、ドアから離れる。
境は黒いポニーテールに目を向けて言う。
途端に髪色が曇り空のような灰色に変わる。
それだけ交わすと、2人は廊下を歩き出す。
「言っておくとすれば、
ノイズ、青空と曇り空、そして真夏とフィクション」












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。