ふ、と目を伏せるあなた。
そんなこと、知ってる。
あなたがいたら、いつでも楽しかったし、自然と笑顔がこぼれた。
笑えないような時だって、あなたがそう言ってくれたことを思い出して笑顔になれた。
「…優吾はすごく優しくて、いつも笑顔で。とっても素敵な人だと思う。」
あなたを笑顔にできるように。
あなたを守れるように。
あなたを傷つけないように―――…
いつも、考えてきたのに。失敗してばかりだった。
すっ、と息をすった君は、僕の目を見て、弱く笑った。
「優吾、私以外の人といる時も、同じ顔してるよ」
頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。
俺の笑顔は、あなたのためのものだった。
俺は、あなたのために笑顔でいたんだ。
「優吾は、誰といても楽しそうで、誰に対しても優しい。すごく素敵だと思う。」
あなたを。あなたに。あなたのために。
「だけど私は、それがすごく辛かった。」
なんの、意味も無かった。
俺があなたを想っていた事が、無意味どころか、彼女を傷つけていた。
「優吾の隣にいるのは、私じゃなくてもいいんだよって、言われてるみたいで」
誰にでも優しくしていたわけじゃない。
心から心配していたわけじゃない。
取り繕っていただけ。善人ぶっていただけ。
あなたが、喜ぶと、思って。
「ごめんね。私、そんなに強くなれないや。」
すべてが、無駄。
「そんな優吾の素敵なところを見て、勝手に嫉妬して、傷ついてる自分が。惨めで、汚くて、嫌なの。辛くなる。何でこんなことでイライラすんだろって。自分の器の小ささに嫌になる。そんな醜さを隠して、取り繕った笑顔で優吾の隣にいることに…意味があるのかなって。」
あなたは、ゆっくり立ち上がった。
上着を羽織る。あぁ、出ていくんだ。そう思った。
「今までも、多分根底はこのことが原因なんだよね。もう疲れちゃった…。ごめんね。今までありがとうね。」
俺は、立ち上がることも、声を出すことも、手を伸ばすこともできないまま。
彼女は、静かにいなくなった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!