第4話

#2
855
2022/01/29 15:09 更新
ふ、と目を伏せるあなた。
そんなこと、知ってる。
あなたがいたら、いつでも楽しかったし、自然と笑顔がこぼれた。
笑えないような時だって、あなたがそう言ってくれたことを思い出して笑顔になれた。


「…優吾はすごく優しくて、いつも笑顔で。とっても素敵な人だと思う。」


あなたを笑顔にできるように。
あなたを守れるように。
あなたを傷つけないように―――…

いつも、考えてきたのに。失敗してばかりだった。

すっ、と息をすった君は、僕の目を見て、弱く笑った。


「優吾、私以外の人といる時も、同じ顔してるよ」


頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。
俺の笑顔は、あなたのためのものだった。
俺は、あなたのために笑顔でいたんだ。


「優吾は、誰といても楽しそうで、誰に対しても優しい。すごく素敵だと思う。」


あなたを。あなたに。あなたのために。


「だけど私は、それがすごく辛かった。」


なんの、意味も無かった。
俺があなたを想っていた事が、無意味どころか、彼女を傷つけていた。


「優吾の隣にいるのは、私じゃなくてもいいんだよって、言われてるみたいで」


誰にでも優しくしていたわけじゃない。
心から心配していたわけじゃない。
取り繕っていただけ。善人ぶっていただけ。
あなたが、喜ぶと、思って。


「ごめんね。私、そんなに強くなれないや。」


すべてが、無駄。


「そんな優吾の素敵なところを見て、勝手に嫉妬して、傷ついてる自分が。惨めで、汚くて、嫌なの。辛くなる。何でこんなことでイライラすんだろって。自分の器の小ささに嫌になる。そんな醜さを隠して、取り繕った笑顔で優吾の隣にいることに…意味があるのかなって。」


あなたは、ゆっくり立ち上がった。
上着を羽織る。あぁ、出ていくんだ。そう思った。


「今までも、多分根底はこのことが原因なんだよね。もう疲れちゃった…。ごめんね。今までありがとうね。」


俺は、立ち上がることも、声を出すことも、手を伸ばすこともできないまま。
彼女は、静かにいなくなった。

プリ小説オーディオドラマ