「もう、別れよう」
そう告げられた、午前2時。
俺の恋人は疲れた表情で俺を見つめている。
「…優吾」
「や…なんで、急に」
少し乾いた声が出る。
気づいたら口の中はカラカラになっていた。
あなたは、そんな俺から視線を外し、冷蔵庫から水を持ってきて俺に手渡した。
「ありがと…」
「急じゃないでしょ。もう、何回目?」
はぁ、と小さくため息をついた彼女を見つめ、過去を思い返す。
俺とあなたは大学で出逢った。
同じ講義でたまたま隣に座ったのが、あなただった。
長い髪を耳にかける仕草が好きだった。
綺麗な髪を耳にかけて見えた横顔に、恋をした。
知り合いだったわけじゃないただの同級生。
なんとか話しかける口実を探して、彼女を盗み見ていた。
そんなことしていたら先生に当てられ、授業を聞いていなくて焦った俺に
仕方ないといった笑いで答えを教えてくれたのが、最初の会話だった。
それから顔を合わせれば話すようになって、お互いの友達も一緒に遊ぶようになって。
俺が気持ちを伝えたとき、君は泣いて笑ってくれた。
俺の笑顔が好きだと、伝えてくれた。
「…今回は、なんで…?」
君を幸せにすると、強く誓った俺でも女心というものがわからないせいなのか
あなたを怒らせることは多かった。
いつも笑っていてほしいと願っていても、知らず知らずのうちに傷つけていた。
何度も別れを切り出され、実際何度もその手を離した。
理由がわかる時もあれば、わからないままの時もあった。
「…優吾さ。今まで何度もこういうことがあったよね。」
いつもの別れ話と、何か違う。
いつも下を向いて、涙を滲ませていたあなたが、
今日はまっすぐに俺の目を見ている。
「何度も何度も。別れようって言ってるよね。優吾、本当に理由、わかってる?」
「…正直、全部が全部はわかってないこともある」
「…私さ、優吾の笑顔、大好きなんだよね」












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!