目的地に着いてから、俊らしき人を探す。
今日は休日なこともあって、
街はたくさんの人であふれていた。
俊はどこにいても目立つから、
すぐに見つけられそうな感じだけど。
すると、後ろから
誰かに肩をとんと叩かれた。
聞きなれた声に反応して
すぐさまふり向くと、
私服姿の俊が立っている。
俊が苦笑する。
俊の服装は、
淡い紺のシャツに黒のスキニ。
ボディバッグ。
首元にはシルバーネックレスと、
手首には腕時計をしている。
制服とは、また違う雰囲気で
いちだんとカッコ良さが増している。
全体的にはシンプルだけど、
アクセサリーをさり気なく合わせていて、
オシャレ感が漂いまくり。
どこかのモデルさんみたいだ。
いつも以上に輝かしい、
キラキラ王子様オーラの俊に、
周囲からの視線もすごかった。
とくに若い女性たちから。
俊の方を見ては、キャッキャッと
興奮気味に話している。
今、私が着ているお洋服は……
肩が出た白いレースの服に、
ピンク色の小花が可愛いらしい
スカートを一緒に合わせてみた。
俊がどんなのが好みなのか、
よく分からなかったこともあって。
完全に私好みで選んでみたから、
少し心配だったんだよね。
でも笑顔の俊にほめられた今、
すごくホッとしている。
手をぎゅっとつなぎながら、
街を歩き出した。
こうして2人で手をつなぎながら、
デートをするのは久しぶりだなぁ。
高校生活が始まって、
なかなかゆっくりもできなかったし。
本当にここ数ヶ月、
色々とありました……。
頭の中で思い返していると、
となりの俊に目を向けられる。
好きな人が行きたい場所に、
私も行きたいんだ。
なのに
俊が不満そうな顔をする。
……今、バカって言った!?
言ったよね!?
何でっ!?
言葉の途中で、不自然なほどに
にっこりとほほ笑む俊。
でも笑顔なのに、
目がぜんぜん笑ってなくて、
こ、怖いです……。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。