第23話

幽霊が二十三匹。
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2026/04/13 15:00 更新
No side
痛々しい悲鳴が一瞬高く響き、そしてすぐに血肉の焼ける音で掻き消された。
簡単なことだ。
物理攻撃で怯んだところに、ただ思いっきり溶岩をぶっかけた。
本当にそれだけ。
戦法とすら言えないような、単純な行動。
しかしそれは、物理攻撃をもはや自分の専売特許とさえ思っていたあなたに効いた。
当たり前だ、幽霊は物理的な干渉ができないというのがこの世の理であるから。
ならば、人間側からなら幽霊に触れるなんていうご都合主義が通用するのか。
するわけがない。
全てのことには都合のよさだけでない理由があるわけで、
ではこの場合、その「理由」の部分を疎かにして見落としていたのは、
エミーリエ
あなたちゃん…
エミーリエ
何、してるの…?
エミーリエが呆れた声で呟く。
何を今更、当たり前の攻撃を食らっているのだと言わんばかりの冷たい目。
ゾムはここでようやく、彼女らが真の意味で仲間ではないことを再確認した。
エミーリエの視線が全てを物語っていた。
本当に仲間であるならば、ゴミを見るような目であなたを見下ろしたりしない。
治れと彼女が呟くと、細胞達はその不可能さに反して勝手に治癒されていった。
あなた
あ、あれ…
フラフラと立ち上がるあなた。
エミーリエ
…
あなた
油断した…私が?
あなた
で、け…蹴られたんだ
あなた
蹴られた…私が…幽霊に……
エミーリエ
あのさ
エミーリエ
…あんまり舐めたマネしないでくれる?
エミーリエ
そっちに霊気割いてたら、全然成仏させられないじゃない
あなた
…分かってんだよ…
ゾムは少し同情した。
何もかもをめちゃくちゃにされて、それでも尚立ち上がらされる彼女に、
昔——生前の、ユノの姿を重ねていた。
最後の戦争で、最愛の仲間たちから理不尽に憎まれていることを知りながら、
グルッペンを狙った銃弾を身体で受け止め、死んでいった彼女。
どこまでも謙虚で、忠実で、何者も裏切らなかった彼女。
ユノがあれほどの虐めに耐え、殺されるまで生き続けたのは、
エミーリエが、ユノが命を絶とうとする度に執拗に邪魔をしたからだったのだと、
のちに本人の口から聞いている。
エミーリエは人を生かすという点で、誰にも勝る才能を発揮するのである。
それも、嫌な意味で。
しかしゾムが、それを顔に表すことはない。
ゾム
ハハ…考えてみりゃ当たり前のことやったわ!
ゾム
お前が…いつもそうするように
ゾム
俺らにも物理攻撃はできる!
ゾム
なんで今まで気付かんかったんやろなあ
ゾム
…ま、脳使う必要ある敵なんかそうそう現れんもんな
もう嫌だ。
その言葉があなたの頭を占拠する。
もう戦いたくない、痛い思いはしたくない、疲れたからやめたい。
出来ないことはわかっている。
あなた
はぁ〜…
投げやりになった彼女の口から、泣きそうなほど震えたため息が漏れた。
目の前にはゾムの拳があった。
あなた
おぇっ…げほっげほっ
吹っ飛ぶ自分の体。
倒れたところに蹴りをくらう。
痛みだけが、感覚として残る。
ゾム
ハハハ、もう抵抗もせえへん!
ゾム
やっぱ物理は楽しいなァ!
抵抗する暇もないままに、ただ痣と傷だけが増えていく。
まだ半分も祓ってない。
自身の身体の表面、賢彦、エミーリエ、その他の作戦諸々のために、
彼女は今、生気を送り続けるための、いわばパイプを何本も伸ばしている。
常人ならば、一気に放出しようとすると卒倒するような生気を常に扱っているのだ。
それらを全て維持しつつ、手元で攻撃のための生気を練り続けている。
ただでさえ脳がパンクしそうな状態の中に、こんな強敵が現れたら。
勝てない。
それどころか、もはや諦めたい。
そう思うのは当然である。
——賢彦に私の生気、全部あげたら。
——代わりに祓ってくれるかなあ。
そんな、希望とも妄想ともつかない譫言が、心の中でポツリポツリと現れる。
打撃をくらうごとに、賢彦への委ねる思いは強くなっていく。
——賢彦は、あいつは。
——除霊に関して言うなら、誰よりも才能がありすぎる奴だから。
——才能を手放さなきゃ、私よりずっと強い祓い屋になれたのに。
なぜ兄があれほどの才を手放したのか、彼女は知る由もない。
しかし理由などどうでもいいのだ。
今はただ、誰かを頼りたい。
信頼できる相手に全てを任せて、そして自分のことを守ってほしい。
——こんな弱音。
——笑われるかな。
脳裏には、幼い頃の風景が浮かんでいた。
彼女を身を挺して守る賢彦の姿。
——ああ。
そしてついに、あなたは。
自分を守る生気を、解除した。
突然拳がすり抜け、ゾムは驚きの声とともに前のめりに倒れた。
ゾム
うおっ!
ゾム
んな、何を…
あなた
ふふ、あはは
あなた
…こ、れで…もう、打撃…は、無効…
ゾム
…アホやな
ゾム
溶岩へのガードがゼロになったっちゅうだけのことやろが
ゾム
痛みで脳も回らんか
冷たく言い放つゾム。
エミーリエ
…あなたちゃん
エミーリエ
もうすぐ、生気が溜まるよ
エミーリエは優しく笑って言った。
ゾム
…言ったらあかんやろ
エミーリエ
別にいいのよ
あなた
あ、ぁ…なるほど、ね
エミーリエ
うん
あなた
分かっ…た、ありが…とう
エミーリエは能力を使い、あなたを治す。
無理矢理治されていく自分の身体にも、もう順応し始めていた。
ゾム
…もうええわお前、可哀想やし殺したる
ゾム
骨のある相手が来たと思ったんやけど、そんなことなかったわ
ゾム
…あーでも、殺したらあかんのやっけ…気絶くらいにしとくか
ゾム
もう痛いの嫌やろ?
ゾム
大人しく言うこと聞いとけや
あなた
…馬鹿じゃないの
あなた
死ぬのはお前だっつーの
ゾム
それ何度も聞いたわ、飽きた
ゾム
他のこと言えへんのかお前
ゾム
降参、とかな
あなた
言うわけねえだろ
あなた
あとちょっとなのに
ゾム
あとちょっとォ?
ゾム
どこがやねん、全然攻撃も何もくらってへんぞ俺は
ゾム
エミーリエの技も確実じゃないわけやし
ゾム
勝算なんかないやろ?
あなた
…
エミーリエ
ほら、あとちょっとだから
エミーリエが急かす。
フン、とゾムが鼻で笑ったその時だった。
不意に、強烈なインクの匂いが、三人の鼻を掠めた。
ピクリと反応するゾム。
なんで、と呟きそうになるのを抑えて、少し周囲を見渡す。
——今である理由がないやん。
今、何か自分たちにとって悪いことが起きていると嫌でも想像ができた。
ゾム
…チッ
エミーリエ
…?
不思議そうな顔のエミーリエと、ゾムの反応に何かを察したあなた。
きっとこれは。
変化の予兆だ。
そうして少しの希望を心に宿した彼女。
もうあまり時間がないことを悟ったゾムは、急いであなたを片付けようとする。
ゾム
…おい、お前
ゾム
さっさとカタを付けようや
あなた
そんなこと言っていいの?
あなた
まるで今のが
あなた
"ここ"が閉じる前兆です、って言ってるようなもんじゃない
ゾム
…生意気やな
あなた
分かってるよ、よく言われる
あなた
例えば…
ゾムの頭に何かが落ちる。
ドロッとした、黒くキラキラと光るこれは。
エミーリエ
…インク…?
ゾム
クソッ、なんで今!
怒りと絶望の表情でゾムが上を見上げると、空には穴が空いていた。
大きな、まるで世界が溶けてしまったような黒々とした穴が。
そこから、一人の男の声が響く。
???
…おい
???
…生きてるか
???
なあ
あなたの名字 賢彦(まさひこ)
生意気な妹よ
あなた
…こいつとかね


















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主
おわり
主
死にます!
※反省の意
主
嘘です生きます
主
あのー
主
ほんっっっとに申し訳ないです更新延期し続けてしまって
主
いくら忙しくてももうちょっと頑張れたはずなんです本当は
主
サボっていたのは多忙の為だけではありません…
主
普通に怠惰もあります…
主
本当にすみませんでした
主
一応これから頑張ってくつもりではあるんですけれども
主
あまり期待しない方がいいです信用なりませんよ私は
※みんな知ってるよもう
主
あと、バトルものにも関わらず地の文が無駄に多いのは
主
主が小説を書くのが久々すぎてもう何も覚えていないので
主
感覚で話を進められないせいであります
主
読みにくかったらごめんね
主
そういうわけで
主
じゃ、ばいばい!

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