
あの日の “ 桃色 ” は、いつの間にか消えていた
だから、時間が経つにつれて
薄れていったものだと思っていたのに
これだけの大きな感情を私に隠せるなんて、
さすが忍びと言おうか
なかなかできることじゃない
桃色なんて抱いていない素振りを
見せることはできても、
感情自体をなくすことはほぼ不可能なのに
急いで雑渡さんの手から肩を離して
タエ子さんの方へ小走りで向かった
てっきり、力ずくで私を
逃がしてくれないと思っていたのに、
なんともあっさりと私を離してしまった
雑渡さんはあたかも、
何事もなかったかのように振舞っている
困ったように笑うタエ子さんは、
腰に手を当てて私を見た
何か後ろから声がすると思って振り返っても、
そこには誰もいなかった
雑渡さんはいつの間にか私の足元で屈んでいた

なんと、雑渡さんが私を肩車しているのだ
現代のお父さんがやるような普通のではなく、
一方の肩に私を乗せている
言っている意味がわからない
私はもう子供扱いをされるような年でもないし
今更そんなことされたら、逆に落ち着かない
私を担いでいる腕に力を込めて、
雑渡さんは話し続ける
私は、どこを見ているかも
分からない雑渡さんの頭を上から眺める
すると雑渡さんはやっと私の方を見て目を細めた
その言葉は、この数年の私を労うも同然で
ひたすらに、ただひたすらに…

嬉しかった













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。