第64話

63話   ひたすらに
255
2026/05/10 07:00 更新
雑渡 昆奈門
…お前、今何が視えてる?
あなた
えっと…















































































































































































































あなた
( 消えてなかった…!? )



  あの日の “ 桃色 ” は、いつの間にか消えていた



  だから、時間が経つにつれて

  薄れていったものだと思っていたのに


雑渡 昆奈門
もう一度聞く
雑渡 昆奈門
私は今 “ 何色 ” ?
あなた
えっ…えぇっと…



  これだけの大きな感情を私に隠せるなんて、

  さすが忍びと言おうか



  なかなかできることじゃない



  桃色恋情なんて抱いていない素振りを

  見せることはできても、

  感情自体をなくすことはほぼ不可能なのに


タエ子
そういや、なんであなたは早めに帰ってきたんだ?
あなた
!!
雑渡 昆奈門
……
あなた
そうなのよ〜、タエ子さん
あなた
ちょっと嬉しいことがあってねぇ?



  急いで雑渡さんの手から肩を離して

  タエ子さんの方へ小走りで向かった



  てっきり、力ずくで私を

  逃がしてくれないと思っていたのに、

  なんともあっさりと私を離してしまった


あなた
……
タエ子
嬉しいこと?
あなた
そう! 私の “ 色 ” が視えたのよ~!
タエ子
押都 長烈
確か、視えないと言っていたな
諸泉 尊治郎
隠れてるとか言ってなかったか?
あなた
えぇ、隠れていたわ
あなた
あの淀んだ “ 青色 ” が無くなっていたのよ
雑渡 昆奈門
…それで、“ 何色 ” になったんだ?
あなた
……



  雑渡さんはあたかも、

  何事もなかったかのように振舞っている


あなた
“ 桃色 ” よ、先生とおなじ
山本 陣内
桃色?
押都 長烈
恋情ではなかったのか?
あなた
そうねぇ、確かに “ 桃色 ” の主な意味はそうよ
あなた
でも、先生は慈愛に満ちた人だったもの
あなた
まさか “ 色 ” まで同じにできるなんて!
タエ子
よかったなぁ、あなた
雑渡 昆奈門
……
あなた
ところで宴なんでしょう?
あなた
何を食べたい?
タエ子
いいよ…料理めんどいし…
あなた
私が張り切っちゃうわ
あなた
美味しいお味噌汁も作りましょうね
タエ子
お前本当に面倒見いいよな



  困ったように笑うタエ子さんは、

  腰に手を当てて私を見た


あなた
まぁ、ケンタやソウスケのお世話をしていたから
あなた
子供扱いすることはあっても、されたことはあまりなかったのよね
雑渡 昆奈門
ふーん…
あなた
ん?



  何か後ろから声がすると思って振り返っても、

  そこには誰もいなかった


雑渡 昆奈門
なら…
あなた
…!?



  雑渡さんはいつの間にか私の足元で屈んでいた


















































































































































































































雑渡 昆奈門
私がうんと子供扱いをしてやろう
あなた
な…



  なんと、雑渡さんが私を肩車しているのだ



  現代のお父さんがやるような普通のではなく、

  一方の肩に私を乗せている


諸泉 尊治郎
おぉ
山本 陣内
昆、せめて一声かけろ
雑渡 昆奈門
ははは
あなた
…雑渡さん?



  言っている意味がわからない



  私はもう子供扱いをされるような年でもないし

  今更そんなことされたら、逆に落ち着かない


雑渡 昆奈門
あなた、お前は「色まで同じにできるなんて」と言っていたな
あなた
え、えぇ…そうね…
雑渡 昆奈門
私はそうは思わない
あなた
えっ?



  私を担いでいる腕に力を込めて、

  雑渡さんは話し続ける



  私は、どこを見ているかも

  分からない雑渡さんの頭を上から眺める


雑渡 昆奈門
お前はケンタとソウスケに虐げられていた
雑渡 昆奈門
子供全般を嫌っても仕方のないことをされたにも関わらず、陣左や諸泉の坊には母親のように接した
あなた
それは…だって、尊奈門ちゃんや陣内左衛門ちゃんは関係ないでしょう?
雑渡 昆奈門
そうだな



  すると雑渡さんはやっと私の方を見て目を細めた


雑渡 昆奈門
『先生の “ 色 ” が移った』んじゃない
雑渡 昆奈門
お前が『元々慈愛に満ちていた』んだ
あなた
……
雑渡 昆奈門
別に無理して先生に近づこうとしなくとも、とうに同じだった
雑渡 昆奈門
お前はその “ 色 ” に相応しい人間だよ
あなた
…っ



  その言葉は、この数年の私を労うも同然で


  ひたすらに、ただひたすらに…

















































































































































































































          嬉しかった

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