山本さんは本当に何も言えないらしい
私が挑発すると、山本さんは眉間に皺を寄せた
視線を泳がせて何かを一生懸命考えている
またタックルされた
なんなのこの人
そう言われて、雑渡さんと同じ方を見てみると、
“ 桃色 ” に包まれた二人が見えた
ピーチチチ
しばらく二人を眺めていると、
急に山本さんが遠くを見て怒鳴り声をあげた
「矢羽根」の存在は名前だけは聞いたことがある
でもこんなにも存在感が無いものだとは…
雑渡さんは目を細めて、タエ子さんに微笑みかける
私は全く別のことに気を取られていた
だってタエ子さんが主役なんでしょ?
私は左肩に視線を向けると、
雑渡さんの男らしいゴツゴツとした手が
未だに私の方を支えていた
雑渡さんの方へ振り返ると、
私と彼の鼻がくっついてしまいそうになった
ここまで近い距離にいたとは
「どうしたの?」と言おうとしたその時、
雑渡さんの心臓付近を中心に、
“ 桃色 ” が大きく爆発した
“ 色 ” が無い人なんていない
特にこれといった感情を持っていない場合、
その人の性格を表す “ 色 ” が視えるから
雑渡さんはこの一年、あの綺麗な “ 空色 ” から
“ 色 ” が変わることは特になかった
私も巻き込まれるほどに大きな爆発をする
“ 色 ” を抱えていたということは
今の今まで感情を持っていなかった、
もしくは…
その激情を押さえ込んでいたか













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!