うるさい。
うるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!!
今までと比にならないほどの量の声が頭に響く。
誰かを殺さなければ、じゃないと落ち着かない。
一旦街へと降りようか、と思い、羽を生やして天界から降りた。
街の路地裏に着陸し、俺はそこにいたタバコを吸ってる男性を迷いなく殺した。
これで落ち着く。
だがいつもとは様子が違う。
幻聴が悪化した。
「殺してやる」
「死ねばいいのに」
「そこを動くな」
やだ。
そんなの嫌に決まってるだろ。
路地裏の奥から何かがやってくる。
そこには得体の知れないバケモノがいた。
俺は恐怖のあまりフードを被っていないまま街へと飛び出した。
一斉に周りの人々がざわめき、悲鳴が響いたあとは街はパニック状態だった。
とにかく早く誰かを殺さなければ。
早く誰かを………誰かを………!!!
俺は走っている女性を串刺しにした。
穴から綺麗な赤色の液体が出てくる。
それでも幻聴は治るどころかどんどん悪化していった。
まだ足りない。
今度はサラリーマンらしき男性を潰した。
肉塊が飛び散った。
それでも幻聴は治らない。
後ろからバケモノが来る。
嫌だ。
殺される。
この悪夢から早く出ないと。
また1人、もう1人、あと1人。
殺して殺して殺して殺して殺して殺して……………。
それでも幻聴は治らない。
幻覚も悪化する。
なんで?どうして?
いつもはこれで落ち着いていたのに。
うるさいうるさいうるさいうるさい!!!!
やめろ!!!それ以上俺に向かって叫ぶな!!!!
俺の訴えは届くはずもなく、もはや叫び声しか聞こえない。
まだ殺さなきゃ、殺さなきゃ!!
自分でも何を言ってるのかよくわからない。
とにかく早く殺さないと、悪化する。
早く殺さないと。
じゃないと嫌なことが全部やってくる。
ピカも兵隊も銃声も叫び声も押し寄せてくる。
そんなのは嫌だ。
俺は狂ったように人々を殺め続けた。
体力が尽き、意識がなくなった。
目覚めた時には、青い空とそこに向かって伸びるビルが見えた。
全身が痛い。
うっすらと叫び声が聞こえる。
幻聴はだいぶ落ち着いたようだ。
起き上がってみると、あたりは真っ赤に染まっていた。
死体の山がそこらじゅうにある。
全部、俺がやったんだよな、これ。
自分でも少し信じられない。
だが、それを見るとなんだか安堵した。
やっと、落ち着けたのだと。
しかしまだうっすらと幻聴が残っている。
それに、これから何をするのかも考えておきたい。
俺はゆっくり立ち上がり、死体の山へと近づく。
比較的綺麗な状態で残っている死体を引っ張り出し、俺は首に手をかけた。
俺はそう呟いて、手に力を加えた。
ポキッ、と情けない音が小さく響いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。