Episode∥ ❀錨月 陽菜❀
── 陽菜の家 7:00 ──
──ピピピッ ピピピッ
──ピッ私は重い体をよじりながら何とか身支度をして
部屋を出る。すると思いっきり抱きつかれた。
"愛華"、私の妹でいつも明るい。
リーダーシップもあるから、常に人気者。
自慢の妹だけど、お母さん達は愛華ばかり見て、
私の事を見てくれない。だから、少しそれが苦しい。
けれど、その事を私は愛華には絶対に言わない。
だって、私も愛華が大切だし、お姉ちゃんだから。
この秘密は、絶対に墓場まで持っていくんだ。
── 学校 科学室 ── ────ドォォォォンッッさっき聞こえた爆発音。きっとまた失敗したんだ。
そう思いながら煙の先に見える人に目をやる。
この人は神代せんせー。私の部活の顧問で、
さっきの爆発音の犯人。明らかに学校で取り扱ってない
実験をして、生徒から変人と言われてる先生だ。
そういながら神代せんせーは薬品を片付け始めた。
なんの実験をしていたんだろう。神代せんせーの失敗する
実験なんて相当だ。噂によるとこの人タイムマシンを
一度作ったとかなんとか……。
そう言って神代せんせーはさっさと薬品を片付けて
箱にしまい込んでしまった。
神代せんせーは私にお菓子を手渡した。うちの学校は、
お菓子禁止だ。思わず声を出そうになると神代せんせーは
口元に手を当てて『内緒だよ』と言わんばかりに
ウインクした。
静かにそう言うと神代せんせーは頭を撫でてくれた。
あったかい。家での苦しみも、嘘のように苦しく
なくなった気がする。
神代せんせーのおかげで、私は今日も愛華に嘘ついても
引きずることなく、私の気持ちをぶつけずに済む。
すると今日もきっと大丈夫だと、安心できた気がした。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。