あなたside
なんかりゅう、どっかいっちゃったな……
どうしてだろ?
あ、お腹減ったとか?笑
だれだ、この人。
身長は180越えってとこか…
顔も整っててすごく綺麗で黒スーツが似合ってる
てか名前変わってんなぁ…………
余裕があったのもここまで。
次に聞いた言葉で私は頭が真っ白になる。
.
は、、、、?
もう何が何だか全然わからんないよ
大丈夫なわけないじゃん
今日初めて会った人と結婚?
意味わかんない
御曹司ってことは…
この人の親と会社がすごいってことだよね…。
きっとこの先の有栖川グループのビジネスにも大きく
関わってくるからお父様は
この人を、このグループを選んだんだろう。
私に 拒否権 なんて最初から用意されてなかった
だよね
私は何を期待してたんだろう
この状況から助かる方法なんて
何一つ無いって分かりきってたはずなのに。
私、、、あなたの事なんて知らない
なんて言えない。
じゃあ逆に大丈夫じゃない って
言ったら何が変わるのよ
何も変わらないでしょう?
言ってやりたい。
きっとこの人は何も悪いことはしてない。
なのに、どこかに、
自分の中から沸いてくる怒りを飛ばしたい
こんな感情初めて。
上手く言葉が出てこない
さっきの挨拶回りなら
社交辞令がすらすら出てくるのに
こんな時に役立たないなんて
もう 全部全部全部全部 意味が無い
私が空返事をした所で
お父様が口を開き、またもや私と七咲さんを
驚かす一言を放った
私たちが絶句したとき
遠くから
【有栖川社長、一言ご挨拶をお願い致します】
と、司会の呼ぶ声が聞こえた。
そう一言 言うとお父様はステージへと向かった
そう優しく言われても
私の頭の中は荒れまくっていて何が何だか。
なぜ、お父様がいなくなった瞬間に
馴れ馴れしく喋ってくるの?
今日あったばっかりなんだけど。
それでも御曹司かよ
馴れ馴れしくしてこないで
そう思いながら作り笑顔で乗り切る。
そう言って微笑む奏斗さん。
私には何故いきなり呼び捨てで
呼ばれるのか意味が分からない。
そんなに仲良くもないのに。
でも未来の旦那さん。
そんなレッテルが頭の中を一瞬駆け巡る
ダメだ、今は何も考えないでおこう。
これ以上考えてしまうと
自分が自分じゃなくなってしまう。
さっきから付き合いで20歳になったからと
言って、少しお酒を飲まされている
でも相手が話に夢中になっているあいだに
りゅうがジュースに替えてくれてた。
だから実際そんなに飲んではない。
気分悪くなんてないんだけど、
少しでも早く1人になりたくて、
この人から離れたくて
普段はつかない嘘をついた。
わかったような口聞かないで。
私は今でも あなたとの“付き合い” を演じてるの。
優しい人、でも今は鬱陶しい。
そう言って手をひらひらと振ってくる
それに反応して、私も微笑みながら手を振り返した
やっと終わった
後でお父様に何か言われそうだけど
もう先に帰ろ。
疲れた
20歳の記念すべき日は
私の人生の中で最も最悪な日になりました
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。