ピピピピッ ピピピピッ
朝6時を知らすアラームがなって、私は徐に体を起こした。
そして、それとほぼ同時に、隣のベッドから威勢のいい挨拶が聞こえてくる。
「おはよっ、未夢ちゃん!」
「…おはよう…えっと、翔くん?」
会ってからまだ1日しか経っていないのに、もうこんなに気軽に話しかけてくる彼はやっぱりすごいと思う。しかも、下の名前で、だ。
私だったら絶対にそんなことは出来ない。まあ、言われれば返しはするけれど。
そんなことをぼんやり考えていると、またしても隣から威勢のいい声が聞こえてきた。
「えっ!なんで!?」
「なに?どうかしたの?」
「俺、まだ名前教えてないよね!?」
「えっ?夕方教えてくれた気が…」
そこまで言って、やっと気づいた。あれは夢で、それがまた正夢なら、彼と名前を教え合うのは今日の夕方だ。
「あっ、ごめん、間違え…」
「なんで俺の名前が翔だってわかったの!?今日教えようと思ってたのに、、」
「あっ、そうだ、また昨日の正夢が見えるやつじゃない!?どう?当たってる?」
私の耳にマシンガンのように言葉がどんどん飛び込んでくる。
正夢だってまだ本当か確証がないし、、でも、彼の名前が翔だと言うのは本当らしかった。
と、いうことは。
もしかしたら、これは、本当に未来が見える能力なのかも知れない。
流石に二回連続でこんなことが起こると、信じざるを得ない。私はこういう系統のものに関心はないが、事実かどうか揺らいでいる状態は好きではないから、もういっそ信じることにした。
…でも、これは彼に伝えてはいけない、そう、私の直感が言っていた。
また、あまり関わるな、とも。
もしかすると、これは直感ではなくすごくぼんやり覚えている夢の断片からそうおもったのかも知れないけれど…
「ねぇ、未夢ちゃん、答えてよ〜!」
「あんまり広めたくないなら、誰にも言わないからさ!」
「…本当に間違えちゃっただけ。高校の同級生に翔って人がいて、その人に声が似てたからつい、、」
「…本当に?」
「…うん。」
「…そっ、か…」
「で、ところで翔くんはどうして私の名前を知ってるの?」
「えっ、、、。」
そう聞くと、彼はいきなり黙り込んでしまった。
なにか、都合の悪いことでもあるんだろうか…?
だが、そのまま、何をするでもなく彼の方をボーッと見ていると、彼はゆっくりと口を開き、小さな声で話し始めた。
「実は、俺のお父さんがここの院長で、、それで、俺が未夢ちゃんの担当医になるっていう条件と引き換えに未夢ちゃんのこと、色々教えてもらったんだ…」
「…未夢ちゃんに黙ってこんな探るようなことして、、本当にごめん!!」
彼はそう言い、深く頭を下げた、、、
のだが、そんな彼の頬がピンク色に染まって見えたのは、気のせいだろうか、、?
「ううん、別にいいよ。それに、担当医だったらそういうの知ってないとだしね。」
「…っていうか、翔くんってお医者さんだったの!?」
「うん、、まあ、一応資格は持ってるけど、、」
「へぇ〜すごいじゃん!」
......
「じゃあ、担当医として、これからもよろしくね!」
「う、うん、よろしく…」
彼はそういうと、少し俯いて、それから、トイレに行く、と言って部屋から出て行ってしまった。
………私が、彼に対して、また、少しだけ、自分の気持ちに対して、嘘をつき始めたのは、、、この日から。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!