はい来ましたよ。短編でしか書かないばうてる。
多いよ、文章。(当然のように)
他の女の子と付き合ってたばぁうくんと
まひさんと付き合ってたてるさんが
なんとなくセフレになった世界軸。
苦手かも、と思ったら避難を願います。
それでは!
目元を擦ると、少しずつ視界がはっきりしていく
白いシーツの上に縫い付けられたような自身の桃色の髪が頬を撫でた
ふと、目の前から声が掛かる
その声の主は僕の顔を覗き込むと、満足気な顔をしてベッドから降りた
彼の名前を呼ぼうとするも、掠れて少し咳き込む
少しも悪く思ってなさそうな口調でそう言うものだから、そっぽを向いて別に、と呟く
数時間前の下半身の違和感はもうどこにもなく、身体は綺麗だった。
変なところで優しい人だと思う
上裸の彼の背中には赤い線が蔓延っていた。
彼は背を向け窓を開ける
爪、切っておけばよかったな
さっき自分で言ってたじゃない、と唇を尖らせる
何処から取り出したのか、彼は煙草に火をつけた
白濁の息が、夜風に乗って飛んでゆく
彼のシャツを1枚羽織っただけの姿のまま、引っかき傷だらけの背に近づいた
鼻をかすめる甘ったるい香りに、くらりと意識が揺らぐのを感じる
僕らの関係には程遠い、甘味のような香り。
脳裏に浮かぶ、水色の後ろ姿。
甘い記憶は、サイダーのように弾けて消える
自然消滅みたいな、そんな終わり方だった。
僕はあの人が好きだったし、きっとあの人も僕のことをそれなりに好いてくれていた。
僕には甘すぎたくらいの柔らかい愛情は、僕を埋めて満たして、溢れさせた。
突然消えたその熱が恋しくて、なんでもいいからと、誰かの情を求めた。
結局僕は、熱に溺れていただけだったのかもしれない
明白な何かはなかった。
あの人も僕も、満足はしてなかったけど、別に物足りない訳ではなかったのだと思う。
諭すように彼は言う
ぽろ、と小さい炭が先端から落ちていく
湿った蜂蜜の瞳が、僕を見据えた
夜に溶けていくような煙を虚ろに見つめる
未完成のジグソーパズルみたいな心に
薄暗い光が差した
多分、愛ではあったけど、恋ではなかった。
でも、いなければ逢いたくて、声を聞きたかった。
貴方じゃないとダメなの、とか、そーゆー言葉とは違ったんだ。
半ば押し付けられるように渡された煙草は、大人が酔いしれるには随分小さいんだなと思った
ぐしゃ、と音を立てた箱が彼のスウェットに仕舞われる
赤い炎が白の先端に触れる
ほろ苦く、何処か甘いその香りに、口をつける
声を出して笑うのは、珍しいなと思った
あの人が吸ってたものとは、また別の香り。
あれよりも少し甘く、少し濁ったような香り
彼が僕の名前を呼ぶ。
あの人と同じ呼び方で。
僕が、君を通して誰を見てるかなんて、知っているだろうに。
いつか別れは来るのが世の理だと言うけれど
穴を埋めるだけに見つけたこの熱は
何故か繋いでおきたかったのだ
携帯灰皿を取り出した彼は、僕のぶんまでぶんどってぐりぐりと押し潰した
にっと笑う彼の表情の先には、愛だの恋だのなんて感情なんてこれっぽっちもない。
傷痕を縫うようなその言葉は、僕の心をギリギリに満たすために使われた
秒針の音が部屋に響く
刹那、身体が浮いた
僕をベッドに押し倒して、ね?と首を傾げる彼
頷くことも横に振り払うこともできず、黙って唇を受け入れる
思いがけず口から出たような言葉は彼の動きを止めた
嫉妬なんて可愛いものとは違う、もっとどろどろと黒い何か。粘着を含んだ不快な何かだ
自分の所有物が自分のこと以外を考えているのが気に食わないのだろうか
結局、僕は彼の手札なのだろう
多分僕がこの関係を続けるなら、この人じゃないとダメなんだと思う
彼が発する言葉はどれも、醜い愛情の重なりの隙間を、どこまでも優しく擦ったのだ
好意よりももっと汚く、嫌悪よりももっと深い何かが、僕の目前を通り過ぎた
恋人なんて関係になったら、僕は彼を愛せないし、彼は僕を捨てるだろう
あの人がいなくなって、茫然自失になったのは事実で
だから彼という熱を求めたのも事実で
煙草よりも身体に悪くて、恋情よりも苦い何かを持ち合わせている人
僕らの感情なんかとは程遠い純白のシーツに身体を埋めながら
僕は今日も、毒を食む
gift・・・ドイツ語で「毒」。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。