千春ちゃんの真剣な眼差しに、あたしに会わせたい人が誰なのか。すぐに予想がついた。
そう素直に言葉にしてしまったら、千春ちゃんはあたしを軽蔑するだろうか?
そしてみんなは、あたしをどう思うだろうか?
カラカラと扉が開く。その向こう側に人影が見えた瞬間、あたしは固唾をのんだ。
知ってるもなにも……。
社長と呼ばれたこの人は、父の姉。あたしのおばさんなのだ。
そうは言いながらも、杏子おばさんは少し嬉しそうだ。
杏子おばさんは大きくため息を吐いた。
紅さんに会って過去を思い出し、気持ちの整理ができなくなった。今だって、彼女に会うと思ったら不快な気持ちになってしまった。
前に進みたいのに、進めない。
みんなに迷惑ばかりかけている。
その時。
あたしの言葉を遮るように、高らかな声が響いた。
杏子おばさんがゆっくりと紅さんに歩み寄る。その背に、怒りの炎を背負って……。
※
紅さんは、しゃくり上げて謝罪を繰り返す。
杏子おばさんにすがりついて子どものように泣きわめく紅さん。そんな姿を見ていると、可哀想に思えてきた。
紅さん力なく返事をしたあと、疲れたように肩を落とした。
そんな紅さんを杏子おばさんは満足気に眺めている。
杏子おばさんは何かを言いかけて、口をつぐむ。
未だにしゃくり上げて泣いている紅さん。その隣で彼女をなだめているのは梨々花ちゃんだ。
杏子おばさんは、目の前に居るのに。
なぜだか少しだけ、遠くにいってしまったような気がした。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。