私、西園寺 秋華
どこにでもいる、至って普通の高校1年生。
と、言いたいところだけれど。
私のお父さんは日本で一二を争う大企業、西園寺グループの社長で、私はいわゆる社長令嬢。
簡単に言えばお嬢様というやつだ。
そして私は今、生まれて16年目にして初めてお嬢様に生まれたことを猛烈に恨んでいる。
なぜなら……
高校1年生になった私の専属執事として、西園寺家に代々仕える雪平家から雪平蒼真が選ばれた。
同じ学校の同じクラスということもあって、どんな時でも私の傍にいられるし、昔からの知ってる蒼真なら私を任せても安心だ……なんて、お父さんが太鼓判を捺したせい。
蒼真は私と同い年。小さい頃から私の家にも良く出入りしていて、昔からずっと一緒に育ってきた。
いわゆる幼なじみ。
……そして、私の好きな人。
……行っちゃった。
つい大好きなガトーショコラに気を取られて、話を逸らされたことに気付くのが遅くなってしまった。
もう!蒼真のヤツ、私の扱いが人一倍上手いんだから。
おまけに、私の専属執事になって早1ヶ月。どんどんスルースキルが上がってきてる気がする。
私が何を言ったって、優しく笑ってスルーしちゃう蒼真は、完全に執事としての仕事を全うしようとしてる。
私との幼なじみとしての思い出は!?
私の蒼真への大きくなりすぎた気持ちは!?
伝えることもなく、このままお嬢様と執事の関係として接していくなんて……
私は絶対、嫌なんだから!!
蒼真がスルーできないくらい、ありったけの気持ちを、毎日イヤってくらいに伝えてやる!!
そしたら蒼真だって、私のことが少しずつ気になって、"執事"なんかじゃない、私の大好きな幼なじみの蒼真が戻って来てくれるはず!!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!