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第1話

第1話 お嬢様と執事
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2019/10/19 04:09
私、西園寺 秋華さいおんじ しゅうか
どこにでもいる、至って普通の高校1年生。

と、言いたいところだけれど。

私のお父さんは日本で一二を争う大企業、西園寺グループの社長で、私はいわゆる社長令嬢。
簡単に言えばお嬢様というやつだ。


そして私は今、生まれて16年目にして初めてお嬢様に生まれたことを猛烈に恨んでいる。

なぜなら……
西園寺秋華
西園寺秋華
ねぇ、蒼真!
2人の時くらい敬語やめてよ
雪平蒼真
雪平蒼真
お嬢様に敬語を使うのは
執事として当然です
高校1年生になった私の専属執事として、西園寺家に代々仕える雪平家から雪平蒼真ゆきひら そうまが選ばれた。

同じ学校の同じクラスということもあって、どんな時でも私の傍にいられるし、昔からの知ってる蒼真なら私を任せても安心だ……なんて、お父さんが太鼓判を捺したせい。

蒼真は私と同い年。小さい頃から私の家にも良く出入りしていて、昔からずっと一緒に育ってきた。

いわゆる幼なじみ。


……そして、私の好きな人。
西園寺秋華
西園寺秋華
……執事とかお嬢様とか
そんなの関係ないよ!
西園寺秋華
西園寺秋華
だって、私たち小さい頃から
ずっと一緒に育った仲だよ?
西園寺秋華
西園寺秋華
今さら執事とかお嬢様とか
そんなの……
雪平蒼真
雪平蒼真
お嬢様、本日のティータイムには
お嬢様のお好きなシエル・ルージュの
ガトーショコラをご用意いたしました
西園寺秋華
西園寺秋華
……え!?本当?
雪平蒼真
雪平蒼真
はい。用意して参りますので
おかけになってお待ち下さい
西園寺秋華
西園寺秋華
やった〜!
シエル・ルージュのガトーショコラって
しっとり濃厚で、だけど重すぎなくて
西園寺秋華
西園寺秋華
ガトーショコラの中で
シエル・ルージュのガトーショコラが
いっちばん、好きなんだよね

って、ちょっと蒼真!
話そらさないでよ!
まだ、話の途中でしょ……!?
……行っちゃった。

つい大好きなガトーショコラに気を取られて、話を逸らされたことに気付くのが遅くなってしまった。

もう!蒼真のヤツ、私の扱いが人一倍上手いんだから。

おまけに、私の専属執事になって早1ヶ月。どんどんスルースキルが上がってきてる気がする。

私が何を言ったって、優しく笑ってスルーしちゃう蒼真は、完全に執事としての仕事を全うしようとしてる。

私との幼なじみとしての思い出は!?
私の蒼真への大きくなりすぎた気持ちは!?

伝えることもなく、このままお嬢様と執事の関係として接していくなんて……


私は絶対、嫌なんだから!!
西園寺秋華
西園寺秋華
……そうだ!
いいこと思いついた
蒼真がスルーできないくらい、ありったけの気持ちを、毎日イヤってくらいに伝えてやる!!

そしたら蒼真だって、私のことが少しずつ気になって、"執事"なんかじゃない、私の大好きな幼なじみの蒼真が戻って来てくれるはず!!
西園寺秋華
西園寺秋華
よし!!
そうと決まれば、作戦開始だ!

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