第2話

はじまりはコードギアス
42
2021/05/09 23:32
遡ること一年前。

暗い部屋の中で、オレは一人静かにテレビを見ていた。

元々はアニメなんて見る属性じゃなかったけど『こころのビョーキ』になってから、すっかり二次元の世界にハマってしまった。

現実の煩わしいことなど考えずに済むし、何よりストーリーに没頭できるのがいい。

特に、アニメ『コードギアス』は繰り返し何度も見ている。

控え目にいっても「神作品」だ。
ウシ
ウシ
あー…『コードギアス』、マジで神アニメだわ
そうつぶやき、コーラを一口飲んだ。

口の中で弾けるシュワシュワ感と、甘ったらしい後味がクセになる。
ウシ
ウシ
「リフレイン回」は、マジ何回見ても泣ける…
カレンかわいいよカレン
『コードギアス』の中でも一番好きな回は、第9話だ。

ヒロインであるカレンは、実の母親のことを憎しみ、蔑んでいた。

しかし、母親はカレンに対し、昔と一切変わることなく愛情を注いでいた。

まだ平和だった頃の「あの時」に戻るため、リフレインと呼ばれる薬物を多用してまで、カレンを愛していたのだ。

母が娘を愛する気持ちと、カレンの葛藤が一気に解消されたストーリー展開に、心震えた。

オレも家族ともう何年も連絡をとっていないけど、母もまたオレのことを気にかけているのだろうか。

自分の家族のことを思い返し、少し胸が苦しくなった。

テレビを消すと、真っ暗な画面に自分の顔が映った。
ウシ
ウシ
はぁ…切ねえ…
思わず、口から本音が出てしまった。

一人暮らしを始めて3年が経つが、未だに誰かをこの自宅に招いたことがない。

家族を含めて、だ。

また、オレは人と出かけることが、ほぼない。

旅行なんかも一人で行った方が自由に動き回れるし、スケジュールだってその日の気分で変えられる。

でも、友だちとかと旅行すると、お互い時間を合わせないといけないし、色々面倒なのだ。

あと、『こころのビョーキ』になってからは、人と会うことすら億劫になった。

会ったらどうせ病状のこと聞かれるので、何かそういうのに答えるのが精神的にしんどい。

大丈夫じゃないから、3年以上も精神科に通っているわけで…。
ウシ
ウシ
まぁ、自分で選んで『ぼっち』になっているわけだが…
何かを得たいなら、ほんの少しでも行動をしないと、何も起こらない。

一人が寂しいのなら「人と会う機会」に身を置かねばならない。

でも、頭の中では分かっていても、今ひとつその「一歩」を踏み出せずに、この3年間を生きてきてしまった。

変わりたいなら何かしないと…焦りだけが増えていく。
ウシ
ウシ
うつだ…
小さくつぶやき、オレは部屋の照明に手を伸ばした。

照明から長く伸びた紐を下に引くと、カチャンと乾いた音がした。

そして、部屋全体が真っ暗になった。

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