4階 空き教室
本番まであと少し。
なのに、いつまでたっても明那が来ない。
4階に変更なのはちゃんと伝えたし、
場所を間違えてる事はない。
明那が遅刻してくる事はないだろうし、
本当に何があったんだろう。
...、事故とかじゃないよね。
いや、そんな事考えないでおこう。
大丈夫だ、明那なら。
大丈夫...
今まで明那と悩みに悩んで擦り合わせてきた
あるシーン。
明那とこれまでずっと話し合って決めた
シーンを湊とほとんどぶっつけ本番で
やらなきゃいけないのは厳しい。
正直、湊には申し訳ないけど
今回の劇は明那とやりたかった。
この日に向けて、2人で生徒会の仕事を
こなしながらも練習して、
休み時間だって、ひたすらに練習した。
それを見てくれていた皆の期待を裏切って
しまう気がするし、
その忙しさの中一緒に頑張った人と
出来ないのは誰も悪くないんだけど、
正直、すっごく悔しいし悲しい。
まあ、もう決まった事だ。
ぐずぐずしてられないし、
明那が今来ても、多分間に合わない。
でも、少し来て欲しい事を願っている
私もいる事は否めない。
明那...、
ずっとその事を考えていると、
小道具が入った段ボールを踏んでしまった
転ける。そう思った時には、
視界が暗くて、もうダメだ。
劇を出来なくしてしまうのは
嫌なのに。
もう時間を巻き戻す事も、
これを無かった事にするのももう無理だ。
神様はそれを許してくれない。
皆に謝りながら私はこの運命に
抗わず、時に身を委ねた。
はずだった。
ふわっと、音がするような。
私は地面に打ち付けられる事もなく、
誰かに抱かれているような
温かい感覚に襲われていた。
はっと、するとその人がいた。
明那が来てくれたという
安心と嬉しさと驚きがずっと頭に
過って来て、
泣いてしまいそう。
人の温もりを感じたくて
私は1人、側から見れば寂しがり屋みたいに
その場にしゃがみ込んで、
明那が来るのを待っていた。
私は明那が同じ場所に帰って来た時、
つい抱きついてしまった。
自分らしくないし、気持ち悪いのは
分かってる。
けど、ずっと明那を求めてたのは事実だし、
来てくれなきゃ、劇に出る気力もなかったと
思う。
本当に信じて待ってて良かった。
そういうと、明那は
俗に言う片膝立ち?
ホストがやるみたいに立って、
私に手を差し伸べて来た。
あぁ、これももしかしたら明那と
出来てなかったかもしれないんだ。
< あきな
夜見れなさんのマジックの腕は...
まあ、秘密で!
dyticaさん1周年おめでとうございます!
ロウくんの新衣装神すぎる...
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。