稲汰は、ご丁寧に身振り付きで初恋指南塾の宣言をしてくれた。こういう馬鹿正直なところが、稲汰のチャームポイントの1つでもある。
端から見たらお笑いコンビに見えなくもないやり取りを終え、本題に入る。
わかったような口振りで話す稲汰だが、稲汰自身は恋をしているのだろうか。
神奈の経験上、異性との出会いが多いのは学校という認識がある。逆に、学校以外の場所が思い付かないと言ったほうが正しいだろうか。
神奈は普段、千葉県の学校に通っており、今は稲汰に会いに来るために学校の学習会も休んでいる。無理矢理合コンに参加しようとしても、今の状況だと無理がある。
稲汰が、困りきった表情で神奈を見る。
稲汰の表情に胸がチクッとするのを感じた神奈は、夏休み中に出会いを求めるのを諦めることにした。
(神奈)それより、稲汰との“今”を全力で楽しまなきゃ!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!