第17話

【幕間】 一年はあっという間Lv.999
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2024/02/21 06:02
_彩々@さあや_
彩々さあや
……終わっちゃったねー、修学旅行
_芙蓉@ふよう_
芙蓉ふよう
あっという間だったねー
 大路良おおろら高校の二年生全員が楽しみにしていた、中間テストの後の一大イベント……修学旅行。そんな四日間の楽しい時間も、もう終わりを迎えようとしている。
 今は帰りの新幹線の中。彩々とふーちゃんと座席を合わせて、お菓子を食べつつ雑談している。
_彩々@さあや_
彩々さあや
あっという間と言えば……。確か、リズミが転校してきたの、このくらいの時期じゃなかった?
リズミ
リズミ
そう言えば、そうだっけ……
_彩々@さあや_
彩々さあや
うんうん、遠足の前日だったからよーく覚えてるよ!
 彩々にそう言われて思い出した。私が大路良高校に入ったのはちょうど去年の今……十月の真ん中頃だった。
リズミ
リズミ
びっくりしたよ、初めて学校に行った次の日にいきなり遠足だったから……
_芙蓉@ふよう_
芙蓉ふよう
遠足、行ったんだ!?
リズミ
リズミ
うん。来たばっかりだけど、クラスの人と仲良くなれる機会だしせっかくだからーって。彩々と仲良くなれたし、行ってよかったよ
_彩々@さあや_
彩々さあや
いやー、仲良くなりたかったんだけど、正直仲良くなれるか不安だったなー
リズミ
リズミ
えっ、そんなに!?
 結構活発な彩々でさえもそんな印象を持たれていたなんて、驚きだ……。
_彩々@さあや_
彩々さあや
ぶっちゃけ、第一印象はちょっと怖かったなー。自己紹介も淡々としてたし、あまり表情も動かなかったし……
リズミ
リズミ
そ、それは……緊張してただけだから……!
_彩々@さあや_
彩々さあや
あ、そういうこと! 本当に最初は、超クールな子なのかなって思って……そんなことなかったけどね
リズミ
リズミ
まあ、私も私でみんなに馴染めるか不安だったよ。彩々が話しかけてくれて、本当に助かった。あ、もちろん、ふーちゃんもだよ。学年変わってクラスも変わって……初めに話しかけてくれたよね
_芙蓉@ふよう_
芙蓉ふよう
あらリズミさん。何よ、急に改まってー!
 ふーちゃんの唐突なマダムへのキャラ変を軽く受け流して続ける。
リズミ
リズミ
二人とも、私と仲良くしてくれて本当にありがとうね!
_彩々@さあや_
彩々さあや
えっ、嬉しい……んだけど……。ホントにどうしちゃったの?
リズミ
リズミ
ほら……一年経ったから伝えておかないとって……
_彩々@さあや_
彩々さあや
で、でも……それ今じゃなくても……! 嬉しいけど!
 彩々が声をひそめた。私の声は思ったより通っていたらしく、通路を挟んで横に座っていた担任から仏のような笑みが向けられていた。
_彩々@さあや_
彩々さあや
早いねー、一年って
_芙蓉@ふよう_
芙蓉ふよう
もうすぐ私たちも受験生かー……
_彩々@さあや_
彩々さあや
それは言わないで……。まだギリ修学旅行中なんだから!
 来年の今頃は勉強漬けか……。そんなことがふとよぎって、私まで頭が痛くなる。
_芙蓉@ふよう_
芙蓉ふよう
ごめんごめん。じゃあ、話変わるけど……二人はどの大学行こうか考えてる?
_彩々@さあや_
彩々さあや
特に話変わってないって……
 そんな二人のやり取りを聞きながら、私は窓の外の景色に目をやる。全く知らない県の全く知らないところ。田んぼが広がり、遠くには山が見える。大路良市とそんなに変わらないなー、なんて、そんなことを考える。
_彩々@さあや_
彩々さあや
あ、そうだ。二人とも、これ食べよう!
 彩々が、お土産の入った紙袋の中から箱を一つ取り出した。修学旅行先の名物のお菓子だ。どうやら、家族たちに買ったのとは別に、私たちと食べるためにも買ったのだそう。
リズミ
リズミ
やったー! ありがとう!
_芙蓉@ふよう_
芙蓉ふよう
いただきます!
 美味しいお菓子と、その後のお昼ご飯で配られた弁当に舌鼓を打ち、お腹は満たされた。
 旅の疲れと満腹感。そんな最高の条件が揃ったので、私は眠気に勝てるはずもなく……。
 あっさりと、夢の世界に入っていった。

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