※本チャプターには、挿絵が含まれます。
恐ろしく静かだった特別教室棟を脱出し、模擬店が並ぶ中庭まで出てくると、ようやく賑わう声が聞こえてきた。
模擬店のお目当ての食べ物も買えたところで、あとはもう用事がないと思っていたのだけど……。
屋台から少し離れたところのスペースに、女子生徒たちで構成された人だかりができているのが見えた。誰かかっこいい人が絡まれているんだろうか。かわいそうに……。そう思って通り過ぎていこうとすると、角度が変わって、囲まれている人の顔が見えた。
なんとなんと、取り囲まれていたのはまさに私の(義理の)兄、才紀だった。大学でも異様にモテていると聞いていたけど……ここでもか。
かけられる言葉がどんどんエスカレートしていく。助けに行かないと……! そう思って女子生徒のかたまりに声をかけようとした時だった。
ナイスタイミングで、変態がナンパをしかけてくれた。女子生徒たちの注意が急に現れた変態ナンパ男(無職)に向いている隙に、才紀のもとに近づく。
才紀を引っ張って、女子生徒たちから離れたところに隠れる。
とりあえず、才紀にはこの着ぐるみを脱いでもらうことにした。
隠れていた校舎裏を出てすぐ、いつの間にかはぐれてしまっていた彩々とも合流でき、一緒にむっちゃんのところに向かった。
しれっと私に飛びつこうとした変態の顔面に、むっちゃんの肘打ちがしっかり入った。
お化け屋敷をやっている教室は、中庭のすぐそこにあった。聞き慣れた悲鳴も聞こえてきたので、すぐに分かった。みんなで向かうと、ちょうどM兄が出てきたところだった。
そう言って再び入っていこうとするM兄をみんなで引っ張る。これでようやくうちの兄たちと合流できた。みんなを引き連れ、オカ研の展示をやっている第六理科室へ向かう。
もう、宇宙人のみんなはいなくなっていた。他の部員たちも再び模擬店に入っているみたいで、中にはふーちゃんしかいなかった。
一般の生徒職員は一切見に来ないものの、それはそれなりで盛況を見せた、最高の文化祭二日目になったと思う。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!