あなたside
放課後______。
♪~… ♪~…
あなた「……………。」
ヘッドホンを耳に、駅のホームに向かっていると。
杉野「じゃーな渚!」
潮田「うん。また明日。」
丁度杉野と別れた渚の姿。
一緒に帰った事が無いから忘れてたけど、確か同じ電車通学って前言ってたっけ。
そしてその背に声をかけようとしたその時。
「…………おい。見ろよ渚だぜ。何かすっかりE組に馴染んでんだけど。」
「だっせぇ。ありゃもう俺等のクラスに戻って来れねーな。」
潮田「……………。」
あなた「………………。」
校舎は違えど同じ学校。
最寄りの駅に本校舎の人がいるのは別に不思議な事じゃ無い。
けど、私達としては会いたく無いわけで………。
学校同様、外でもE組を見るなり彼等は明らかに私達を見下し、馬鹿にする様な言葉を平気で吐く。
自分達の方が上の人間なのだと………それが当然だとわからせる様に。
気分が悪い。
グイ
あなた「行こ………。」
潮田「えっ宮城さん!?」
私は渚の腕を掴み、早足にその場を立ち去ろうとする。
「うわ、逃げやがったぜ。」
「そう言や、停学明けの赤羽までE組復帰らしいぞ。」
「うっわ最悪。マジ死んでもE組落ちたくねーわ。」
じゃあ来なければ良い。
今まで同様、良い子ちゃん見たく勉強だけしてれば良い。
こっちだって願い下げだ。本校舎の生徒見たいな人達と授業受けるのなんか。
心の中で悪態をつきながら、更に歩みを進めようとしたその時。
ガシャン!
赤羽「へー死んでも嫌なんだ。じゃあ今死ぬ?」
あなた「!?」
物が割れる音。
その音に振り向けばそこには、先に帰ったはずの彼………赤羽君が割った瓶を彼等に向けていた。
「あっ赤羽!!」
「うわぁっ!!」
ダッ
赤羽君を見るなり、彼等は逃げる様に走って行った。
赤羽「あはは。殺るわけ無いじゃん。ずっといい玩具があるのに、また停学とかなる暇無いし。」
潮田「…………カルマ君。」
あなた「……………。」
赤羽「でさぁ渚君。聞きたい事があるんだけど。」
そして私達は話しながら改札を潜った。
ピピッ
赤羽「殺せんせーの事ちょっと詳しいって?」
潮田「………う、うん。まぁちょっと。」
赤羽「あの先生さぁ、タコとか言ったら怒るかな?」
潮田「タコ?うーん、寧ろ逆かな。自画像タコだし、ゲームの自機もタコらしいし、この前なんか校庭に穴掘って……。」
『タコつぼ』
潮田「…………って言う一発ギャグやってたし。先生にとってもちょっとしたトレードマークらしいよ、タコは。」
赤羽「………ふーん。そうだ。くだらねー事考えた。」
何を考えたのか、ニヤリと口角を上げる赤羽君。
潮田「カルマ君、次は何企んでんの?」
赤羽「…………俺さ、嬉しいんだ。あいつがただのモンスターならどうしようかと思ってたけど、案外ちゃんとした先生で。」
パァァン
ゴォォ
赤羽「ちゃんとした先生を殺せるなんてさ。前の先生は自分で勝手に死んじゃったから。」
潮田「……………?」
あなた「……………っ…。」
走り去る電車。
そして、赤羽君の言葉と表現。
彼の言葉の意味は少し分からなかったけど、彼の表情に私は…………少しゾッとしてしまった。
でもその反面、疑問もあった。
何処か「先生」と言うものに執着がある様な………そんな違和感を彼から感じた。
・
・
・
翌日_______。
昨日の事が少し気になりつつも、普段通り登校し教室へ向かう。
扉を開けると、何故か静かな教室。
そして入って早々目に止まったのは…………教卓の上に置かれたピックが刺さった本物のタコ。
誰が置いたのか、一目瞭然だった。
教室の後ろの自分の席に座り、笑みを浮かべる彼………赤羽君。
皆が分かっていた。けど、誰も何も言わず…………私達はただ先生が来るHRの時間まで待った。
ガラガラガラ
殺せんせー「おはようございます。」
「「「「「……………。」」」」」
普段なら返すはずの挨拶。
それに誰も返さない。先生と目すら合わせない。
ただ…………変な緊張感だけが教室に流れていた。
殺せんせー「………ん?どうしましたか皆さ____。」
赤羽「あ、ごっめーん!殺せんせーと間違えて殺しちゃったぁ。捨てとくから持って来てよ。」
殺せんせー「…………分かりました。」
明らかに誘ってるのが分かる。多分、先生だって分かってる。
赤羽君の後ろ手にはナイフ。
先生はタコを持って歩いてくる。
赤羽(………来いよ殺せんせー。身体を殺すのは今じゃなくても別に良い。まずはじわじわ心から殺してやる。)
しかしその時、先生の足が止まり……。
ギュイィィィ
赤羽「!?」
先生の触手がドリルの形に変わり、高速に回転する。
そして次の瞬間、先生は何処かへ行ったかと思えば……。
殺せんせー「見せて上げましょうカルマ君。このドリル触手の威力と、自衛隊から奪っておいたミサイルの火力を。」
その手にミサイルと、何かの材料を持って戻って来た。
殺せんせー「先生は、暗殺者を決して無事では帰さない。」
赤羽「!!ブヘッ!?」
そして次の瞬間、赤羽君の口に放り込まれた何か。
ミサイルと材料を使い先生は………。
あなた「たこ焼き………。」
殺せんせー「その顔色では朝食を食べていないでしょう。マッハでたこ焼きを作りました。これを食べれば健康優良児に近付けますね。はいあーん。」
赤羽「……………。」
殺せんせー「カルマ君。先生はね手入れをするのです。錆びてしまった暗殺者の刃を。今日1日、本気で殺しにくるが良い。その度に先生は君を手入れする。」
赤羽「…………!」
殺せんせー「放課後までに、君の心と身体をピカピカに磨いてあげよう。」
そして、今日1日がスタートした。
1時間目 数学_____。
殺せんせー「………とこの様に、どうしてもこの数字が余ってしまう。そんな割り切れないお悩みを持つ貴方!でも大丈夫。ピッタリの方法を用意しました。黒板に書くので皆で一緒に解いてみましょう。」
授業をする先生の背に銃を向ける赤羽君。しかし………。
ビュン
殺せんせー「あぁカルマ君。銃を抜いて撃つまでが遅過ぎます。」
赤羽「っ!?」
殺せんせー「ヒマだったので、ネイルアートを入れときました。」
赤羽「…………!」
先生の手にはさっきまで赤羽君が持っていた銃。
そして赤羽君の方は爪に、可愛いタコとたこ焼きのネイルが施されていた。
4時間目 家庭科_____。
殺せんせー「どうです?不破さんの班は出来ましたか?」
不破「………うーん。どうだろ。何か味がトゲトゲしてんだよね。」
殺せんせー「どれどれ。」
赤羽「へぇ。じゃあ作り直したら?一回捨てて。」
ドンッ
そう言い、赤羽君は先生に向けて鍋をひっくり返す。
そしてそのタイミングでナイフを振る…………が。
殺せんせー「エプロンを忘れてますよカルマ君。」
赤羽「…………!」
一瞬の間に、可愛いエプロン姿に。
殺せんせー「スープならご心配無く。全部空中でスポイトで吸っておきました。ついでに砂糖も加えてね。」
不破「あ!マイルドになってる!」
あなた「……………。」
潮田(…………無理だ。)
5時間目 国語______。
潮田(殺せんせーは結構、弱点が多い。ちょいちょいドジを踏むし、慌てた時は反応速度も人並みに落ちる。けど………どんなにカルマ君が不意打ちに長けていても。)
フニョン
ピタ
殺せんせー「_______赤蛙はまたも失敗して戻って来た。私はそろそろ退屈し始めていた。」
あなた「……………。」
潮田(ガチで警戒してる先生の前では………。この暗殺は無理ゲーだ。)
6時間目にはもう赤羽君は、ナイフを抜く事も銃を構える事も出来なくなっていた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。