御者を待たせては退屈してしまう
~2008番地~
馬が地面を蹴る音
馬車が揺れる音
木々のざわめき
雨雲の匂い
港に着く頃には雨が降りそうだな。
濡れさせたくはないが…どうすべきか。
これで帰ってから降り出すぐらいだろうか
村からなら最短ルートで馬車と同じぐらいに港につけるだろう
途中に湖があって迂回する他ない馬車と違って、俺の知り合いは湖を突っ切って渡れるしな
そっちのが楽だ
~村~
彼女は何処にいるだろうか?
まぁ。酒場だろ
俺は膝をつき彼女の手の甲にキスを落とす
酒場にいるなら酒を飲んでると思うが…
本当に大丈夫か?
俺が押した酒場のドアは音を立てて開いた
中は騒ぐ人で溢れていてタイラを見つけるのは面倒くさそうだ
…と、思ったが彼女から来てくれた
村の外れまで少し歩いた後、彼女は手を湖に当てる
彼女の周りには水が舞い踊り、湖には水で船が形成されいく
俺は他国の情勢や国の中のスパイの話をタイラに話した
あぁ。髪を結わえて貰うのは何時ぶりだろうか
誰が結ってくれたのかさえ今は覚えていない
ショートカットにして軍人として生きるようになってからは髪型なんてどうでもよかった。
ただ。このヘアピンだけは外せなくて。
水面を鏡にして見ると髪の側部に小さな狐と小さいリボンがそえてあった
水の船を乗り越え陸地へと着地する
手を振り離れていく彼女を見ると昔の情景が見えてくる気がして、数分見蕩れていた。
俺は、港への道を走り続けた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。