第8話

七話 三年視点 後半
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2022/07/08 16:49
───────昼休み。
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
(昼飯は食べたし、午後の授業……魔法薬学に使う薬草先に取っておくか)
植物園に向かっている最中、白い玉がフワフワとゆっくり浮いているのに気付き、足を止める。何だこれ?と気になり、ついつい触りそうになるが、「触れては駄目ですよ」と背後から誰かに言われ、振り向く。
津雪 憐覇
津雪 憐覇
人が触れたら、身体を乗っ取られ兼ねません
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
えーっと……誰だ?
背後に立っていたのは、ゴーストに見間違いそうになるほど全体的に色素の薄い女性。
肌は生きてるのか?と聞きたくなるほどに白い。女性は俺の隣に立つと、白い玉を鷲掴みにし、手に持っていた袋に入れて、手持ち部分をギュッと縛った。
小声で「先に捕まえたいのは電気玉なんですがねぇ」と呟いていたが、俺にはその意味がさっぱり分からない。
津雪 憐覇
津雪 憐覇
先程の質問ですが、私は今日から暫く学校で清掃員をすることになった憐覇です
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
女性の清掃員なんて雇ったのか、学園長。
にしては……変わった服装ですね
津雪 憐覇
津雪 憐覇
エプロンの下に着ているのは東洋の服です。支給の服が間に合わず、仕方なく着ています
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
東洋から来たんですか?
津雪 憐覇
津雪 憐覇
そんな所です
随分と曖昧な答えだが、女性は「今の白い玉に電気が走っている個体を見かけたら、玉に触れずに教えてくれると有難いです。失礼します」とだけ言うと、颯爽とこの場から去って行った。
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
(あの白い玉、結局なんだったんだ?身体を乗っ取られるかもしれないから触れてはいけないって言ってたけど……あの女性は普通に触ってたよな)
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
よく分からないが……
早く薬草取りに行こう
─────────食堂。

昼食を摂る為に食堂へ向かうと、犬猿雉を連れた一人の女性を目撃する。
案の定他の生徒達から注目されているが、本人は気にせずにおかずをとっている。お皿ではなくタッパーに。
ヴィル・シェーンハイト
ヴィル・シェーンハイト
(何者……?なんで男子校に女性がいるのかしら)
後ろ姿しか見えないが、変わった服装をしており、髪はまるで銀水色の糸のよう。
女性はおかずをとり終えると、タッパーの蓋を閉め、猿と雉を連れて食堂から出て行く。
しかし、女性の後ろを歩いていた犬は販売されている期間限定の肉パンに気付くと、売店の前に立ち止まり、尻尾を振っていた。
ヴィル・シェーンハイト
ヴィル・シェーンハイト
(分かりやすいわね……。というか、犬が肉パンなんて分かるの?それとも、肉にだけつられたとか?)
シロ
シロ
うぅ……美味しそうだなあ。
でもお金ないしなあ……
ヴィル・シェーンハイト
ヴィル・シェーンハイト
(喋った……!?まさか、グリムと同じ?)
津雪 憐覇
津雪 憐覇
来ないと思ったらここにいましたか
柿助
柿助
早く行こーぜシロ。電気玉は捕まえらんなかったけど、さっきの別行動で憐覇様が火の玉一個捕まえてくれたし、掃除もしないといけないしで腹減ったー
ルリオ
ルリオ
食堂の食事が無料で助かったな。俺達が食堂でご飯食べたら変に目立つだろうから、別の場所で食べるって学園長に頼んでタッパーも貰えたし……
津雪 憐覇
津雪 憐覇
学園長はドラ○もんなのでしょうか
シロ
シロ
ガクえもんに頼んだらお肉くれるかなぁ?
津雪 憐覇
津雪 憐覇
ガクえもんって……。さぁ、行きましょう。ご飯が冷めてしまいます
女性と動物達は何事も無かったかのように再度食堂から出るが、周りの連中は「い、今の誰だ?」「女?」「動物が喋ったぞ」とザワついていた。
本当になんだったのかしら。
ヴィル・シェーンハイト
ヴィル・シェーンハイト
(けど、あの人とは言い難い容姿……悪くないわね。美人と言えば聞こえはいいけど、その言葉で済ますには違和感があるわ。なんというか……アタシ達人間の生き生きした“動”の美ではなく、銅像や花瓶に飾られた花みたいな“静”の美と言った方がいいのかしら?気になるわ)
────────ミステリーショップ前にて。
ミステリーショップでの簡単な買い物を済ませ、店内からでる。出来ることならオルトに買い物を頼みたかったのだが、「たまには外に出なよ」とオルトに強く言われ、断れなかったのだ。言われてみれば、ここ最近はゲームのイベントに夢中になり過ぎて何時もより外出する数が更に減っていた。
拙者はそれでも構わないけど……。
イデア・シュラウド
イデア・シュラウド
(ん?え……猿?)
ミステリーショップから学校内へと歩いている最中、一匹の猿がのんびり二足歩行でベンチがある方に歩いていくのが見えた。
後ろには犬と雉?を連れた女の人も居る。
イデア・シュラウド
イデア・シュラウド
え、ここ男子校……
女の人と動物達が当たり前のようにベンチに座るので、この学校はいつから女子も通えるようになったんだ?と変な錯覚をしそうになる。よく見れば、女の人は学生服ではないし、通っているわけじゃなさそうだ。
僕の視線に気付いたのか、白い犬が僕の方を見て「あー!」と声を上げる。
イデア・シュラウド
イデア・シュラウド
な、何……!?怖いんですけど……!?
てか、喋った?
シロ
シロ
やっぱりこの学園凄いね!獣耳や尻尾が生えてる人がいたり、髪が燃えてる人もいるんだー!
津雪 憐覇
津雪 憐覇
シロさん、そういった発言は大声で口に出すものではありませんよ。失礼にあたる場合もありますからね
シロ
シロ
ご、ごめんなさい……
かっこよかったからつい
イデア・シュラウド
イデア・シュラウド
(ぼ、僕が、かっこいい……?いやいや、自意識過剰にも程があるでしょ。あの子が言ってるのは僕自身じゃなくて僕の髪だし。一瞬でも勘違いした自分が恥ずかしいわ〜)
女性は僕を見ると、無表情ではあるものの、静かに頭を下げた。もしかして、謝罪の礼なのだろうか?とにかく、また変なことを言われる前に、僕はその場から逃げた。
─────────ベンチ近くにて。

食事を済ませ、人が少なそうなミステリーショップ付近にあるベンチで休もうとするも、ベンチには既に一人の女性と動物達が食事をしていた。確か、先程食堂に居た者達だ。
リリアも校庭で見かけたと言っていたし、この学校で何をしているのだろう。
津雪 憐覇
津雪 憐覇
この学校の料理、美味しいですね
柿助
柿助
うめー!これは、明日の昼飯も楽しみだな!
ルリオ
ルリオ
お金が無い分、今のうちに元をとらないとな
シロ
シロ
お給料入ったらお肉パン食べたいなぁ
津雪 憐覇
津雪 憐覇
本来の目的を忘れないで下さいよ
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
(本来の目的?)
僕はリリアと同様耳もいい。ベンチから離れた木の下で一時的に休むも、女性と動物達の会話が自然と聞こえてくる。
シロ
シロ
はい!大丈夫です!ちゃんと分かってます!電気玉を捕まえて肉パン食べたら帰るんですよね
ルリオ
ルリオ
おい……途中、余計な目的が混ざってるぞ
柿助
柿助
どんだけ肉パン食いたいんだよお前
津雪 憐覇
津雪 憐覇
肉パンがその時まで売られていればの話ですが
シロ
シロ
ハッ!確かに!期間限定って書いてあったけど、いつまでだっけ!?ちゃんと見てなかった〜!
中々平和そうな会話にらしくもなくクスッと笑いそうになる。盗み聞きする気は無かったが、昼休みのこの場所は人もあまりおらず落ち着く上、離れていても声が聞こえてしまうから仕方ないとも言えるだろう。
マレウス・ドラコニア
マレウス・ドラコニア
(にしても、“電気玉”とは一体なんだ……?帰ると言っていたが、何処へ帰るのだろうか)
疑問に思いながらも、次の授業の為に僕は立ち上がり、教室へと戻った。

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