記憶を呼び起こしながら、にこやかに答える。
一瞬誰だったか、申し訳ないけど思い出せず。
緊張した面持ちのクラスメイト。
特に予定も無かったので小さく頷く。
その瞬間。
ころちゃんの顔が不機嫌に歪んだ事に、私は気づかない。
まさかのお呼び出し。
何か気に障る事をしてしまったのかもしれない。
去っていく背中を見ながら1人不安になる。
そういえばころちゃんの事を放ったらかしにしてしまった。
案の定、彼は不満げで。
謝ろうと口を開きかけた時、
彼が呟いたのは予想外の言葉だった。
ころちゃんが何に怒っているのか、察しもつかなくて。
内心焦りまくっていると。
フッ、と空気が緩んで。
いつも通りの優しい笑顔を、ころちゃんが浮かべる。
若干の間が少し気になったけど。
あえて触れる事無く、また歩き出す。
ちらり、と横目で頭一個分の差がある
ころちゃんの顔を見るけれど。
珍しく、『無感情』1色で。
扉の前に着いても何の反応もしない幼馴染の顔を覗き込む。
心配だと笑ってから様子を伺う。すると。
ころちゃんの焦った時の癖。
それが、バッチリ出ていた。
どうしてこの時、ころちゃんの考えている事が
こんなに気になったのか。
私は後に嫌と言う程、それを思い知って。
同時に、自分の察しの悪さを。
これ以上無い位、恨む事になる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。