第7話

7『春を告げる声』
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2026/02/13 08:30 更新
―ナムジュン視点―

ジミンが最近、よくノートに何かを書いているのは知ってた。
だけど、その中身を俺に見せたことはなかった。

「まだ完成してないから」
「恥ずかしいから」

そう言って、いつも笑ってごまかしてた。

けど、今日。

彼は何も言わずに、一冊のノートを俺に差し出した。

「ヒョン、…これ、曲にしてみた。」

ページをめくると、シンプルな言葉が並んでいた。
飾り気はない。でも、まっすぐで、優しい。

『春じゃなくても、あなたがいれば大丈夫』
『怖かった夜も、あなたの声が道を照らしてくれた』
『心が壊れたあの日、あなたが手を握ってくれた』

俺の中で、何かが静かに崩れた。

ジミンの声が、心の奥に届いた気がした。

この詩は――俺のことを歌っている。

それが、あまりにもはっきりと分かってしまって、思わず目を閉じた。



レコーディング室で、ジミンがその歌を歌った。

声は震えていた。
でも、どの音も、どの言葉も、真っ直ぐだった。

まるで「好きだよ」と言葉にする代わりに、
「君が必要なんだ」と歌っているようだった。

俺は、モニター越しに彼を見つめながら、
どうして今まで気づけなかったんだろうって思った。

いや、本当は気づいてたんだ。
ただ、それを「友情」って言葉で包み込んで、自分を守ってただけ。

でも今――

彼の歌に包まれながら、ようやく認められた。

俺は、ジミンが、愛おしい。



レコーディングが終わったあと、彼は控えめに笑って言った。

「変だったかな?」

「いや、すごくよかった。」

俺はそう答えた。でも、それだけじゃ足りなかった。

だから、一歩だけ、彼に近づいて、静かに言った。

「ジミン。…俺、この曲、すごく好きだよ。」

彼が少しだけ顔を赤らめて、視線をそらす。

「…よかった。」

その“よかった”の中に、どれだけの勇気が詰まってたんだろう。

俺は、そのままそっと彼の手を取った。
あの時、彼が震えていた指先。
今はあたたかくて、ちゃんと俺の手を握り返してくれた。



それは、まだ“告白”とは言えないかもしれない。

でも、この日、ふたりのあいだにあった境界線は――
確かに、ひとつ消えていった。

春の音は、もうすぐそこにある。

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