少し歩いて辿り着いた小さな街。
明るくて…にぎやかな街なのが分かった。
街の真ん中に…大きくて立派な時計塔があった。
13時半………。
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新しい服を買って…とにかくご飯を食べないと……。
でもそのために要るお金が無い……。
左腕の怪我の手当てもしないと…。
キョロキョロと周りを見ると…日陰の所に運がよく布が落ちていた。
それを拾って…ちょうどいい大きさに破り…左腕にまわし、自分で手当てした。
頬の傷は、浅いから…すぐに治るだろう。血ももう出てない。
お金を貰える方法っていえば…
汚れてしまった服を見て…リュウに申し訳なく感じた。
リュウ…どこにいるのかな?
絶対…呆れているよね。たった2つのことも守れないのか!って……。
余った布で…肩まで伸ばした髪の毛を結んだ。
日陰から出て、街の中を歩く。
にぎやかな声。
お母さんに甘える子供の声。
パン屋の出来たてのパンの匂い。
みんなが笑顔になる為に太鼓を叩く音。
水を地面にかける音。
楽しそうなんだけど…
明るいんだけど……
何だか寂しそうだった。暗かった。
私は、そう見えた。
なんでかな?
最初に訪れたのはパン屋。美味しそうな匂いがここに詰まっていた。
ははっと笑いながら、手を動かしパンを作る店の人。
そう言うと、もう顔を合わさずにほかの所へ行ってしまった。
ああ、見た目が悪かったかな?
即効、断れてしまった。
ならば、次だ。
布などが沢山並べている店に行った。
出てきたのは、豚に近くちょっと変わった生物だった。
顔や、言い方が変わった…。
何かも思い通りにはいかない。
その後、色々と頼みに行ったが…無理だった。
気づけば周りは、もう薄暗くなっていた。
さっきからお腹の虫が鳴いている…。
色々なところに足を運んだから、足がもう限界。
明日、筋肉痛になっているんだろうなぁ…。
時計塔を見る…。暗くなったからなのか…時計塔は、光をつけ始めた。
夜に光は綺麗に見えるって本当だなぁって何故かこの時にふと思った。
また針が動く。
この街、小さいと思っていたけど…意外と少しだけ広かった。
またお腹の虫が鳴く。
人通りが少ないところで腰をおろした。
またでっかいお腹の虫が鳴く…。
目の視界の端っこに…パンらしいものが落ちている。
やめて、それは汚いもの…。食べない方がいい。
《お腹の虫が鳴く…。》
少しだけ顔を右へ動かす。やっぱりパンらしいものが見える…見える…見える……。
やめといた方がいいってば…不味そうだし…。
《お腹の虫が鳴く》
《お腹減った》
《食べないの?食べ物が目の前にあるんだよ?》
気がつけば…勝手に体が動き、パンの方へ手を伸ばす。
何やってる?
体が言う事を聞かず…ついにパンを手にする…。
うん、パンに近い…。ふわふわしてるし…。
《生き延びるんでしょ?》
お腹をさする…。一口だけ…。
口を開く…。怒る恐る一口食べた。
凄く………不味かった。
それなのに飲み込んで…また口を開く。
また食べる。
我慢…我慢…。生き延びるためには食べよう。
食べないよりはマシでしょ……。
振り返ると…そこは、1人の女の人が立っていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。