外は土砂降り。
部屋の空気は最悪。
尤も、そんな最悪の空気にしたのは
凶一郎自身なのだが。
…普通は、見下ろす側の圧が
強いものなのだが
椅子に座って足を組み、
自身を睨みつける奏の方が
今は酷く恐ろしい
一昨日とは違うマニキュアを塗っている
爪を見つめながら告げられる
ティーカップに注がれた紅茶を
相変わらず上品に嚥下する
…こんなに低い声で叱りつけられると
凶一郎は最早、反論の仕様がない
嘲るように、しかし目は笑っていない
表情で、睨みつけられる
ネクタイを掴まれ、引き寄せられる
頬に痛みが走る
あまりの勢いに身体がグラつく
…凶一郎と、同じ気持ち
つまり…
久しぶりの…不快感
蹴飛ばした男の鼻から
血が出ている
まだ情報を引き出せていないのに
凶一郎は…拒否してしまった
不快感を……妻を裏切ってしまう可能性を
凶一郎が制止すると分かった上で、
奏は土砂降りの中、傘も持たずに
…窓から飛び出していた
奏の腕を掴み損ねて、
そのまま窓の外に飛びだす
奏は無言
雨が顔に叩きつけてきて
邪魔で堪らない
奏……奏、
ビクリと肩が跳ねた隙に
距離を詰める
ようやく立ち止まった奏を抱きしめて
息を吐き出してから呟く
これでどうにか…
普通に言うのは小っ恥ずかしいし…
…そう思うと自然に
奏の手を取って…膝を着いていた
そっと…頬を撫でられて…
思いっきり抓られた
…一気に機嫌が治った顔で見下ろされる
後日、凶一郎を襲った
上流階級の人間は、
逃走中のところを奏に見つけられて
かなりボロボロの状態で連行されてきた















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。