第67話

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2023/03/25 08:55
湊斗
ちょっ!待っ!!拓っ...!
風峰
いいじゃん!ね?
湊斗
無理無理無理!
風峰
大丈夫大丈夫!痛くない痛くない
湊斗
いや、だからっ...!
俺が熱を出したあの日からよく家に拓が来るようになった。
あの後、結局目が覚めた頃には次の日になっていて、俺も熱が下がったので学校に行った。
日に日に拓の荷物も増えていくので、合鍵を渡すと、1週間に6回は放課後や朝から家に来るようになった。そして、今。拓が持ってきたソファに座らされ逃げないように肩を掴まれている。拓がなんでそんなことをしているかと言うと
風峰
ねぇ、湊斗ぉ。お願〜い
湊斗
い・や・だ!そもそもなんだよ!!俺の物っていう“印”って!
風峰
だって、拓に近付く人多いもん。明らかに好きって気持ちの人もいるし...
最近分かったことは、意外と拓は独占欲が強いこと。青野や稲葉と話しているとそんなにないが、クラスメイトや他クラスの奴と話していると必ずと言っていい程話に入ってくる。
湊斗
近付くって...ただ話してるだけだろ。そもそも好意を持って近付くのは拓の方が多いじゃねぇか!
風峰
俺はいいの!湊斗はダメ!
湊斗
いや、なんでだよっ!
風峰
はい。暴れない!
湊斗
ちょっ!
俺の腕を片手で掴み、俺の頸に近づいてきた。
風峰
ガブッ
湊斗
いっ...
頸に噛みつかれ、痛みが走る。すぐに離れるが、俺の頸を見て満足したような顔をした。
湊斗
何やって...!
風峰
ん?“印”〜
湊斗
はぁ?お前は犬かよ...
拓に噛みつかれた所を離してもらった手で押さえていると、鏡を見せられた。
湊斗
あ?
風峰
手、離して?
湊斗
あー...うん
手を離し、鏡に映る自分の頸を見る。噛み跡が頸にはっきりとある。
湊斗
はぁ...
風峰
どうしたの?
湊斗
絆創膏取りに行く
風峰
えぇ?なんで?綺麗についてるでしょ?
湊斗
見られたらマズいだろ...
そう言いながら、物置に絆創膏を取りに行く。
風峰
俺はいいけどね。逆にその方が虫が寄ってこないしね
湊斗
笑顔だけど言ってること拓らしくねぇぞ
大きめの絆創膏を持って行く。鏡を見ながら、噛み跡が隠れるように絆創膏を貼る。
風峰
隠しちゃうの?
湊斗
うん。それで?今日も家で過ごすのか?
絆創膏を理由もなく触る。
風峰
今日は一緒に行ってほしいところがあるんだ
湊斗
どこ?
風峰
俺の家
湊斗
...ん?なんで?
風峰
付き合ってる人がいるって、妹に言ったら会わせろって言われた
湊斗
え?
風峰
騙されてるかもしれないからって。相手が
湊斗
相手なんだな...。って、大丈夫なのか?ルールのこと、とか...
風峰
そういうの気にしない人だから。
だいじょーぶ
そう言って、「行こ行こ!」と俺の背中を押してきた。断る時間もなく、拓の家についてしまった。
風峰
2人共待ってるって
湊斗
いや、まぁ...うん
2人...?
疑問はあったが、1つ深呼吸をしてから待ってくれていた拓に頷く。拓が玄関の扉に手をかけた。
風峰
ただいま〜!
湊斗
お、お邪魔します...
風峰
おかえり〜!
毛先が金髪の髪をくるくると巻き、ポニンテールにしている女の子が出てきた。半ズボンに半袖の服。この子が拓の妹だろう。
風峰
妹のレミ
風峰
風峰麗美れみです!拓にぃの恋人さんだね!
湊斗
あっ...えっと、留沼湊斗です...
風峰
湊斗くんだね!よろしくお願いします!
拓と似た笑顔を浮かべ、「どうぞ」とリビングに向かうように促す。リビングには既に優しそうだが、どこか疲れた表情を見せる男が座っていた。
風峰
君が拓の恋人か...
湊斗
と、留沼湊斗です!
風峰
留沼くん
立ち上がり、俺の前に立つ拓のお父さん。
風峰
君みたいな子が拓の恋人とは...
湊斗
っ...
風峰
...拓に騙されていない!?
湊斗
...へ?
風峰
ちょっ、父さん...
拓は頭に手を押さえ、溜息をため息を吐いている。
風峰
だって!こんないい子そうな子が拓に惚れるってさ!!
風峰
息子の言葉は信じてよっ!
風峰
ねぇねぇ、湊斗くん。拓にぃのことどう思ってる?
言い合いをしている拓達を置いて、俺の顔を覗き込んだ。
湊斗
だい、好き...です.......
風峰
...!
人の前でそう言うのは、恥ずかしくて顔を下に向ける。
風峰
そっか
少しビクッとなるが、怒っているわけではないことは分かった。
風峰
いいな〜。拓のことをここまで想ってくれる人には簡単には会えないよ?ちゃんと大事にね
風峰
分かってるし
そう言いながら、俺を抱き締める。
風峰
言われなくても手放す気ないもんね〜
風峰
ふ〜ん。あっ、僕はそろそろ仕事に行かないと
風峰
じゃあね〜。無理しちゃダメだよ
風峰
ありがとな。拓
拓のお父さんはそう言って出て行った。残された俺と拓、麗美さんの間で沈黙が流れる。
風峰
そういえば、拓にぃ。どうするの?
風峰
あぁ...この後行くよ
風峰
ふ〜ん。今日はどうかな...
訳の分からない話をされ、俺の頭は混乱していた。
風峰
湊斗くん
湊斗
...?はい
風峰
兄のこと...よろしくお願いします!
湊斗
...こちらこそ!
麗美さんとそんな会話をした後、拓が後ろから抱きついてくる。
風峰
俺の湊斗なんですけど〜
風峰
そんなに独占欲強いと逃げられるよ〜?
風峰
...誰に似たんだよ
風峰
拓にぃじゃない?
風峰
俺〜?...ま、いいや。湊斗、もうちょっとだけ付き合ってくれる?
湊斗
...?いいけど...
詳しくことを教えられないまま、拓の家を後にした。そして、そのまま向かった先は......病院だった。

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