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第1話

宛もない旅先
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2018/08/13 02:08
...ふぅ。
女は溜息を吐き、休憩に取り掛かった。
行先もあてもなく旅をしてどれくらい経ったのだろうか。
時計なんて便利な道具なんてない。
頼りになるのは太陽のみだ。
ただひたすら歩いて休んで――
そんな毎日。
別に退屈じゃないし楽だった。
誰かに気を使わずに自分のペースで進めるのは、独迷子(ひとりぼっち)の特権だ。
(――あっ...)
1人準備してると木々の隙間から月夜が照らしてた。
(綺麗...)
女は手を伸ばした。
もう少しで届きそうなのに届かず、ただただ月を見上げた。
(...早く会いたいな)
女はポケットから手紙を出し、月明かりを頼りに撫でた。
相手は指定されてなかった。
しかも手紙の内容は"君に会いたい。待ってる"だけだった。
名前も書いてなければ場所も指定されていない。
そんなの誰が会いに行くんだ!となるが女はその人を一目見たいと思った。
(――街までまだまだ距離があるから、少し早めに起きよう...)
女は横になり手紙を抱え込んで眠りへと誘った―

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