女は溜息を吐き、休憩に取り掛かった。
行先もあてもなく旅をしてどれくらい経ったのだろうか。
時計なんて便利な道具なんてない。
頼りになるのは太陽のみだ。
ただひたすら歩いて休んで――
そんな毎日。
別に退屈じゃないし楽だった。
誰かに気を使わずに自分のペースで進めるのは、独迷子(ひとりぼっち)の特権だ。
1人準備してると木々の隙間から月夜が照らしてた。
女は手を伸ばした。
もう少しで届きそうなのに届かず、ただただ月を見上げた。
女はポケットから手紙を出し、月明かりを頼りに撫でた。
相手は指定されてなかった。
しかも手紙の内容は"君に会いたい。待ってる"だけだった。
名前も書いてなければ場所も指定されていない。
そんなの誰が会いに行くんだ!となるが女はその人を一目見たいと思った。
女は横になり手紙を抱え込んで眠りへと誘った―
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。