「森本くん、ちょっといいですか?」
ある日、いつもの如く北斗の御見舞に来たとき北斗を担当している主治医の先生に呼び出された。
何かあったのか、と単純に疑問だけを浮かべてついていくと、入院患者専用の待合室にあるソファーに座るよう促されたのでそのとおりにする。
そう聞くと主治医の人は少しの間を明けたあと、ゆっくりと口を開いた。
「彼の、北斗くんの記憶喪失の件なんだけどね、」
病室のドアを開けたらいつものように明るく出迎えてくれる北斗。
大型犬のように尻尾を振っている(ように見える)のがすげー可愛い笑。
北斗は何度も通い続ける俺に対しては人見知りしなくなったようで、ずっと前の、SixTONES全員が仲良しだった頃に戻った見たいで嬉しい。
『慎太郎元気ー?俺は元気ー』
「俺言ってない!しかも聞いてない!」
『んふふー』
珍しく朝からテンションが高かった北斗とそんな話もしたなぁと思い返す。
北斗は人の変化に気づきやすいんだ、昔から。
だから隠さないと。
これ以上北斗の負担になる事はしたくないから。
『北斗くんの記憶喪失の件なんだけどね』
『やっぱり脳に全く異常は見当たらなかったよ』
その言葉を聞いたとき、喜んでいいのか、駄目なのか、判断ができなかった。
こういう時だけ高速で回ってしまう頭が恨めしかった。
最悪の事を想像してしまって。
そうでないであってくれと願うばかりだった一つの仮説。
『うん、』
『北斗くん自身が、この世に存在する"自分"を拒んだんだろうね。』
『特に、"SixTONES"に存在する、"松村北斗"を。』
北斗が、俺らを拒んでこうなってしまったのではないかという、悲しい仮説を
事実だと、その悲しい仮説が真実だと突き付けられて
どうして普通にしてられるだろう。
どうして、普通を装えるだろう。
髙地ならできたかもしれない。
でも俺には、できないよ…。
必死に隠したのに、大丈夫なふりしたのに、
何で気づいてしまうんだ。
俺はもう、北斗に迷惑なんかかけられる立場じゃないんだから。
最後まで、隠さなきゃ。
俺は北斗に背を向け、飛び出すように病室を出た。
そう呼ぶ北斗の声に気づかないふりをして。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!