天界
それは、天使や神様の住まう、ニンゲンの住んでいる「地上」の遥か上に存在しているとされる世界。
地上の航空科学が発達し、人類が宇宙空間に到達してからも、そのような存在は認められていないため、存在するとすれば天界は「宇宙の果て」か、ニンゲンが住む宇宙と違う「異世界」にあるということになるだろう。
我々の住む天界は、後者を指す。
つまり、地上のニンゲンには到底辿り着くことの出来ない空間に存在しているのだ。
豊かな緑。清く透き通った湧き水。淡く天界を照らす温かな光。
そして、そこに住まう天使や神様。
誰もが清らかな心を持ち、すべてが平和に時を刻んでいる。
_____そんな世界が、本当に存在しているのだろうか?
痛みで悲鳴をあげる体をなんとか起こし、天使が去っていった方を睨みつける。
その先では、さっきまで楽しそうに僕を痛みつけていた天使共がけらけらと笑いあっている。
__僕の方を見ながら。
誰かが言った。
「天使の落ちこぼれ」と。
また笑いながら、立派に輝く羽根を羽ばたかせて空に消えてゆく。
悔しくて悔しくて、泣きすぎて枯れたはずの涙も、まだ僕の目に溜まってきて。
ぽたぽたと音を立てながら、血で染まった頬を伝い落ちてゆく。
…………これで、何回目だろうか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。