そこまで言った後、玲華は春臣に時計塔の地図を渡す。
龍夜は続けて、と促す。
他、色々なことを打ち合わせているといつの間にか到着間近だった。
船を適当な棒と紐で繋げ、静かに降りると春臣の顔だけが引き締まった。龍夜は緊張感など微塵もなく、玲華は表情の変化がないからだ。この中では春臣が一番下なせいもあるだろう。
だがやはり、危なげの無い凛々しい佇まいは副隊長の威厳が感じられた。
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色あせた白い石の時計塔は、さすがに行政機関なだけあって大きい。
異国の上品さ漂う街並みにもぴったりだ。
正面の第一門へ行けば恐らく人通りも多いのだろうが、裏にある第三門は閑散としている。
敵地だというのにお互い、平常心でいられるのはやはりさすがと言えるだろう。
それぞれ、自身の道をさっさと進んで行くのも他の隊員では見られない。
玲華は、ちらほらと見える警備の隙間を足音 息切れひとつもさせず軽々とかけ抜けて行った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。