第22話

諦めなきゃ
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2021/03/24 13:06
“俺、体育大会のあと、告白する”

偶然聞いてしまったこの言葉。

何か不機嫌な一条とお調子者の春山がなにやら話していて、途切れ途切れに声が聞こえた。最後に一条の真面目な表情とともにあの言葉が発せられた。

それだけが私の耳にしっかり届いてしまったのだ。
奥村莉音おくむらりのん
恋春?どうかした?
天使恋春あまつかこはる
…ううん
莉音の話はあまり入ってこない。私の頭の中は真っ白になってしまっている。

体育大会…。

それはあと2週間ほどだ。

体育大会になってしまったら、一条が告白してしまう。一条いわく“バカでアホでドジ”の子に。

きっと、その子も一条が好きだろうから付き合ってしまうだろう。

そんな姿見たくないけど…。

でも、一条にとったら幸せなことで、決して私は一条の不幸を願っているわけではない。

ただ、一条の好きな人が私だったらいいのにって。

きっと、私は一条を諦めなければならない。


家の棚の上ではクマのぬいぐるみの耳元に白い花が光っていた。

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