“俺、体育大会のあと、告白する”
偶然聞いてしまったこの言葉。
何か不機嫌な一条とお調子者の春山がなにやら話していて、途切れ途切れに声が聞こえた。最後に一条の真面目な表情とともにあの言葉が発せられた。
それだけが私の耳にしっかり届いてしまったのだ。
莉音の話はあまり入ってこない。私の頭の中は真っ白になってしまっている。
体育大会…。
それはあと2週間ほどだ。
体育大会になってしまったら、一条が告白してしまう。一条いわく“バカでアホでドジ”の子に。
きっと、その子も一条が好きだろうから付き合ってしまうだろう。
そんな姿見たくないけど…。
でも、一条にとったら幸せなことで、決して私は一条の不幸を願っているわけではない。
ただ、一条の好きな人が私だったらいいのにって。
きっと、私は一条を諦めなければならない。
家の棚の上ではクマのぬいぐるみの耳元に白い花が光っていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。