どこにいるのか分からない。
連絡の手段がない。
初めに…振り出しに戻った。
会えるかどうかも分からない、
二度と会えないかもしれない、
それでもいつか会えると信じて
今まで探し続けた。
そんな人にやっと会えたのに、
自ら手放した。
カンタに呼び出された俺は、
先に店の中で飲んでいた。
珍しく晩飯のお誘いだった。
編集してたからさって
言いながら俺の対面に座った。
乾杯をして、
久しぶりに二人で話した。
たわいのない話をして、
お酒とツマミを口にする。
予想はしてたけど…
やっぱりその話か。
あなたの話をする度に、
心が痛む。
俺だって……
少しイラッとして、
口調が荒くなる。
カンタの勘って、
たまに気持ち悪いくらい当たる。
何もしないよりマシか…
カンタは少し考えて、
ウーロン茶を飲む。
長年連れ添った相方。
何を言わなくても察してくれる、
居心地のいい存在。
あなたがいなくなって3ヶ月経って、
俺の異変に気づき、呼び出したんだろう。
気持ち悪いこと言ってるって分かってるけど、
なんか心のもやもやが晴れたような気がした。
さすが相方だな。
照れ隠しで、
カンタにツッコんだ。
あなたを守るって決めたんだった。
ここでクヨクヨしてらんねーよな。
俺らはいい時間帯まで飲んで、
家に帰った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!