それだけ吐き出すと、息が苦しくなって咽せる。
早く救急車を呼びたいのに、身体が動かない。
そのとき、男のスマホがバイブする。
私に向けてたナイフを下げて、舌打ちしてから
スマホを取り出す。
自分が死ぬことは怖くない。
悲しみは乗り越えられるものだから。
大切な人だったら、尚更乗り越えなくては行けないから。
彼は私の携帯を奪って、その勢いで地面に叩きつけた。
困惑する救急隊員の声を聞きながら、私は次に何をすればいいのか、
必死に考えていた。
頭を動かせば何とかなると思った。
いつの日か、彼がしていたように。
耳から入ってくる情報の全てを、
目から入ってくる情報の全てを、
頭が処理してくれなかった。
ただ、彼が最悪の事態にならなければいいと思った。
私は、どうなってでも彼を助けたかった。
それだけ頼むくらい、私は小塚くんが大切だった。
多分小塚くんに惚れていた。
世間一般で言う、 恋 だった。
口を開こうとした男が、
目の前で消えるのが見えた。
その後に風が来て、目の前に力強い背中が見えた。
男と上杉さんの乱闘が始まる。
けれど圧倒的に上杉さんの有利で、
最後は左ストレートで綺麗に拳が入った。
男が倒れるのが見えた。
その後ろから、赤く光るライトも見えた。
視界が水でぼやけた私と、
それを拭ってくれる和典くんと、
一緒に、
救急車に乗せられていく小塚くんをみていた。
小塚くんがどうなってしまうのか…。
書いてる私もワクワクしています…!
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!