第31話

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2024/03/26 09:00







救急車の赤いランプを見ながら想う。


隣で何を考えているのかわからない彼を。



(なまえ)
あなた
和典くん、?
上杉和典
上杉和典
いや、なんでもない
上杉和典
上杉和典
行こうぜ、”あなたのニックネーム”
(なまえ)
あなた
!!



彼が呼んだのはかつてのニックネーム。

私が彼につけてもらった、渾名。




救急隊員
君たち、乗って!
(なまえ)
あなた
…はい
上杉和典
上杉和典
大丈夫だ、小塚は平気だから
上杉和典
上杉和典
家の植物全部置いていくような柔な奴じゃない
(なまえ)
あなた
そう、だよね…?
(なまえ)
あなた
大丈夫だよね…



小刻みに震え始める私の肩を抱きしめて、


何度も自分の呼吸と合わせてくれる。



上杉和典
上杉和典
とりあえず若武に連絡したから
(なまえ)
あなた
お兄には?
上杉和典
上杉和典
そのうち行くだろ
(なまえ)
あなた
警察に行かないとだよね
上杉和典
上杉和典
そうだな、でも大丈夫
上杉和典
上杉和典
俺が付いてるから




そう言ってニカッて、効果音がつきそうな


優しい笑顔を見せてくれる。



こんな笑顔が大好きで、

大嫌いだった。


明るいと言うより、透き通ってるような笑顔は、

眩しかったから。



家に強盗が入った時、


小塚くんが襲われた時、


いじめられた時、


傷ついた時、


 
全部全部 ” 上杉和典 ” に助けを求めた。


「 怖い 」「 無理 」「 苦手 」「 逃げたい 」

「 死にたい 」「 生きたい 」「 どうして私が 」


その言葉を、全部1人で呑み込んでた。





だけど、誰かを頼ることの難しさを教えてくれたのは、

和典くん。




でも、その代わりに安心できる仲間を持つことができると、

教えてくれたのも和典くん。









(なまえ)
あなた
和典くん、好きだよ
上杉和典
上杉和典
救急車の中でうなって
上杉和典
上杉和典
後で、聞くから



そのうちに、私は和典くんの肩にもたれて

寝てしまったみたいで、


起きたのは、お兄の腕の中だった。



黒木貴和
黒木貴和
あ、起きた?
(なまえ)
あなた
お兄…?
黒木貴和
黒木貴和
寝てたみたいだな
(なまえ)
あなた
お兄っ、小塚くんはっ?
黒木貴和
黒木貴和
ICUに入った、重篤らしい
(なまえ)
あなた
……私のせい、私のせいだ…
(なまえ)
あなた
私のせいで小塚くんが…
(なまえ)
あなた
ごめんなさい、ごめんなさ…



病院の廊下でうずくまって泣く私と、

それをただ黙って見てるお兄。


側からみたら、どんな景色なんだろうと、

冷静に考える自分がいて。



(なまえ)
あなた
こんな私、大嫌い
(なまえ)
あなた
世界も、全部全部やり直せたら良かった!
若武和臣
若武和臣
やり直せねぇんだよ、もう
(なまえ)
あなた
若武…さん?
美門翼
美門翼
もう、お前はこっち側の人間ってことでしょ
七鬼忍
七鬼忍
いいんだぜ、言っても
黒木貴和
黒木貴和
アーヤは居ないけど、おんなじ気持ちだろうし
若武和臣
若武和臣
いいか、黒木あなたの下の名前、これは命令でもある!
若武和臣
若武和臣
俺たちを頼れ、使え、!!
若武和臣
若武和臣
友達だろ?!こう言う時に頼るんだよ!
美門翼
美門翼
…仲間でもあるでしょ
(なまえ)
あなた
……



何回も思ってきた疑問も、

信頼も、諦めも、その二つをする労力もどうでも良かった。


病院の廊下のライトに反射するみんなは、輝きを持っていて

とても綺麗だと思った。



(なまえ)
あなた
あはははっ…!
みなさんには驚きっぱなし…
七鬼忍
七鬼忍
?!
(なまえ)
あなた
助けて…。
お願い、私たちを助けて…?
(なまえ)
あなた
友達としてでもいい、
仲間としてでもいいから。
美門翼
美門翼
やっと、敬語外してもらえた
若武和臣
若武和臣
第一段階クリア、だな












やっと敬語を外したあなたの下の名前ちゃんは、

どうなるんでしょうか?!



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