あなたside
あなた「え、1日チームVのアナリスト、ですか?」
絵心「そ。早乙女ゆのが発熱しちゃって。これ以上の体調不良者が出るとほんと困るんだけど…病院に連れて行ったんだけど、別に感染症とかではないってさ」
身体機能強化トレーニングが始まって早くも3日目。
なんと、ゆのちゃんが熱を出してしまったようだった。
理由は髪を乾かさないで放置してたらしい。
そりゃ、熱出すよ。私もそれで50回は熱出したし。
(大嘘です、盛ってます)
絵心「だから、今日の講義は中止。今日はチームZとVのマネージャー兼アナリストってことで」
あなた「え、講義がないんですか?」
絵心「うん、無し」
1日講義を受けたのだが内容のスピードが速すぎる。
詰め込まれたものが、現代日本サッカーで使われている
フォーメーション。FW、MF、DF、GKが求められている
技術。欧州五大リーグの特徴など幅広かった。
そしてここからが酷いのだが、講義が終わった瞬間に
確認テストがあり、9割以上取れるまで終わらない。
私は昨日2回目でギリ合格したのだが、1回目は6割ほど
しかなくて厳しめのお説教を受けた。
…あの人、見た目のヤバさと相まってる。
こんなに厳しくされるなんて…
やっぱり、私、向いてないのかな…
いやいや、そんな私はだめ。完璧に出来なきゃ。
99点止まりでもだめ。必ず、必ず、必ず。満点を。
満点を取れる“あなたの名字あなた”でいなきゃ。
絵心「何?そんなに俺の講義受けたかったの?なら今日は…」
あなた「いや、全然大丈夫です…」
絵心「あ、そ。じゃあ、そういうことで、よろしく」
絵心さんは言うだけ言って、モニターの方へ戻って
しまった。全く。しょうがない人である。
凪「え、てことはあなたは今日、俺たちのアナリストってこと?」
剣城「なるほど、今日はスーパーでインプレッションなアナリストがいるってことか」
んーと…剣城君、スーパーでインプレッションって意味
分かってる?インプレッションって印象って意味だよ?
私そんなヤバめな印象与えたの?
あなた「そういうことになるね。今日1日、よろしくね」
にこりと笑って頭を下げると、御影君を含めた何人かが
よろしく、と返してくれた。
御影「でも、あなたってチームZのアナリストでもあるんだろ?そっちはどうしてんだ?」
あなた「時間差をつけて、少し早くからトレーニングを始めてもらってるよ。そうすればどっちのチームも見れるからね」
さっきチームZにも同じことを伝えて早めにトレーニング
を開始してもらった。勿論。ちょっと早めに起きて
もらっている。蜂楽君はもうちょっと寝たいだとか
言ってるけど今日1日ぐらい諦めてほしい。
御影「なるほどな、理解した。歓迎するぞ。ようこそ、チームVへ。1日だけだけどよろしくな!」
凪「あなたがいるなら俺いつもより頑張ろうかなー…」
剣城「おい凪、それはえっと…何だったっけ?ハイパーなアナライザーでコーポレーション…?」
御影「あんま難しい言葉使うなよ、バカ斬鉄」
この3人、サッカー以外だとたまにちぐはぐしてるところ
あるよね…なかなか見てるの面白い。これ動画に撮って
みんなに見せたい。
凪「…ねぇあなた、なんか変なこと考えたでしょ?」
あなた「いや何も。気のせいでしょ」
そういうと私はぺろっと舌を出して笑って見せた。
そう。私。合ってる。このままこのまま。
あの時みたいに…
今日のスケジュールはなかなかタイトだった。
チームV、Zの部屋は少しだけ離れていて往復するのに
少々エネルギーを使うし、その後には学校も控えている
のでかなりキツイ。
東聖高校では弓道部で、重い弓だって引いていた。
ただ弓道はほとんど上半身で完結してしまうし、
(唯一全身を使うのは座射だけであるが、皮肉なことに
それも殆ど使わない。)体力がすごい鍛えられるかと
言われたらそうではない。
私はバテバテだが、それよりハードなトレーニングを
行っている選手達の前で『疲れた』とは口に出来ない。
あなた「はい凪君、スポドリ」
凪「ありがと、あなた」
あなた「御影君と剣城君も」
御影「ありがとな!…てか玲王でいいぞ?斬鉄のことも呼び捨てでいいし、な?斬鉄?」
剣城「剣城と呼ばれたのは初めてだった」
え、そうだったの?みんな斬鉄って呼び捨てだったの?
いや、まあ試合中だと呼び捨てとかあるけども…
あなた「じゃあ遠慮なく…」
凪「えー俺だけ名字呼び?ねぇあなた、俺のことも名前で呼んでよ」
…凪君は凪君なんだよな、誠士郎って呼びにくいし。
玲王「凪は凪なんだよ、な?斬鉄?」
斬鉄「凪は凪のまんまでいいと思うぞ」
結局凪君はそのままだが、試合があってちょっと
ギスギスしていた玲王との仲が良くなってすごく
嬉しかった。斬鉄とも仲良くなれたし、今日はすごく
楽しい。学校もがんばろ。
あなた「…」
目の前には、本日返却された小テスト。
私は食堂でみんながワイワイご飯を食べているのが好き
でよくここに来ている。…のと、部屋に帰るとダラダラ
しちゃうから、それの防止。
学校で数学の小テストが返却されたのだが、
点数が全体的に下がっていた。前々回に受けたテストは
苦手な数|、Aのテストも平均+10ぐらいは取れていたの
だが、今回、ぴったり平均点だったのだ。
このままだと平均点以下、夢ではないような気がする。
さすがにそれはやばい。私の授業態度や成績は毎度
絵心さんに報告されているし…またお説教かなぁ。
おまけに最近授業も難しいし…
??「どーしたんだ?そんな浮かない顔して」
あなた「わっ!」
後ろから急に声をかけられ、びっくりしてしまった。
慌てて後ろを振り返ると、そこには紫の髪と瞳。
あなた「御影君か…びっくりしたよ」
玲王「御影君じゃなくて、“玲王”な…どうしたんだよ、めっちゃ落ち込んでるカオしてんじゃん」
あなた「あーうん、ちょっと、ね」
私は最近、授業の内容が曖昧なこと。小テストの点数が
下がり気味であることを話した。
玲王「なるほどな…確かに“青い監獄”はサッカーがメインだから勉強に完全集中できる場所じゃないけど、成績がやばいのはな…」
あなた「そうなんだよ…最近数|では三角比をやってるんだけど、なかなか問題も解けなくて」
2人でやばい、やばいと言いながら頭を抱えてる。
すると、御影君…じゃなかった玲王が何かを思いついた
ような明るい顔をする。
玲王「じゃあ分かんないとこあったら俺に聞けよ!俺2年だし、1年のところは分かるから」
あなた「いやでも、玲王、トレーニングで疲れてるでしょ?さすがに頼むのは…」
玲王「いや、俺も1年の復習したかったし、丁度いいよ。
まあでもそんなに言ってくれるなら」
玲王はグイッと顔を近づけて言った。
玲王「あなたってさ今日みたいにたまにスポドリ手渡ししてくれんじゃん?それ、毎日俺にやってよ」
あなた「え、あ、別にいいけど1日アナリストは今日だけだし…」
玲王「二次選考とかでもいいからさ、な?」
そう言われると私は断れない。
あなた「分かった…よろしくお願いします、玲王先生?」
玲王「おう、よろしく頼まれてやる」
ということで玲王は私の専属数学教師になってくれた。
こんなイケメンでサッカーできて頭良い人に教えて
もらえるの…?絶対玲王の学校の女の子にバレない
ようにしよ。冗談抜きで殺される。
翌日もゆのちゃんの熱は下がらず、私がチームVの
アナリストを務めることになった。なかなかみんなと
仲良くなれて嬉しい。ご飯は潔君達と食べに行ってる
のだが、最近は凪君達にも誘われてる。
凪「ねぇ、あなた、今日は俺たちと一緒にご飯食べよ?」
あなた「いや、みんなと約束あるし」
千切「おい、あなた!行くぞ」
斬鉄「待て赤髪!今日はあなたは俺たちと食う」
千切「何言ってんだ、行くぞ」
と取り合いされてる。まじで乙女ゲームの主人公。
ただ可愛くも振る舞えないので、ちゃっちゃと潔君達と
ご飯食べに行ってます。…凪君達?振り解いてる。
夜。今日も学校が終わった後、食堂で1人。
音楽を聴きながらみんなのデータまとめに取り掛かって
いた。絵心さんはやらなくていいと言っていたものの
やったものは必ず見てくれる。最も、文字数制限は
かけられたけどね。
??「なーにしてんの?」
あなた「わっ!」
…なんかめっちゃ、デジャヴ。
後ろを振り返ると、眠そうな瞳が私を見下ろしていた。
あなた「凪君か…びっくりしたよ。どうしたの?」
凪「いや、あなたがいたし、見に来た」
あ、そう…なんか、びっくりした。
凪「てか、何してんの?」
あなた「みんなのデータまとめ。絵心さんに送るの」
凪「え、レポートって廃止になったんでしょ?」
あなた「書いたら見てくれるよ。文字数制限があるけど、できるだけたくさん書いてる」
凪「へぇ、ちょっと見せてよ」
あなた「いいよ、はい」
勿論タブレットで打っているので、目はショボショボ
するし疲れるが、達成感もあるし、絵心さんからの
アドバイスがすごくいいのだ。
凪「これって全員分書いたの?」
あなた「うん、もう書き終わったけど今から文推敲して読みやすく…って!!」
凪君は私の目の前でデータまとめを提出してしまった。
あなた「ちょっと、凪君!何で勝手に」
凪「ねぇあなた。顔色悪いよ」
あなた「え」
凪君の瞳にはからかいの色はなく、真剣。
凪「あなたってさ、頑張っちゃうタイプじゃん?“努力”って言葉を呪いみたいに唱えてるでしょ?だから倒れるんだよ」
凪「ちゃんと自分のこと“みてあげて”アナリストの代わりはいっぱいいるけど、あなたの代わりは誰にもなれないし」
誰にも代わりのきかない存在。一人一人が大切って
よく聞くけど、私はそうは思わない。自分の代わりは
腐るほど世界にいると思う。だからこそ、私は自分を
大切にしようとなんて、思わないし、思いたくない。
凪「俺が、俺が教えてあげる」
白の瞳が、曇りなき眼が私を見つめる。
凪「俺が、あなたが楽に生きられる方法、教えてあげる。だから______________」
次の物語で貴方をお待ちしております。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。