浅羽は左胸のポケットからスマホを取り出す。スマホの通知を確認してから、小走りで雫の家へと向かった。
――雫は一人できっと不安にしているはずだ。
雫の部屋には電気が灯っていて、家に帰ってきていることを示していた。浅羽がスマホでどこかへと電話を掛け始める。
小走りで走ったせいか、浅羽の息は荒く乱れていた。はぁはぁと呼吸音を鳴らしながら、電話の相手へと話しかける。
慣れたように雫の部屋へと浅羽が足を進めれば、扉が勢いよく開き雫が飛び出してきた。
肩を震わせながら、雫が須藤浅羽の腕の中に収まる。きゅっと抱きついた雫の肩を抱きしめ返しながら、部屋の中へと移動した。
瞳に涙を溜めた状態で雫は須藤を見上げてから、指で涙を拭い取った。
――昔の記憶だ。あの時はストーカーなんて本当は居なかったことを、雫はきっと一生知ることはない。俺も言うつもりも、ないが。
きゅっと強く抱きつきながら、雫は須藤の肩に顔を埋めた。それを見た須藤も嬉しそうに雫の頭を撫でる。
──雫より大切なことなんてない。いつだって雫のことしか考えてないんだから。
心の中で呟きながら、須藤は雫の髪の毛に優しいキスを落とした。
<了>












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。