なかなか寝付けなったから映画でも見ようとベットから抜け出した。
廊下に出ると、
ハナとイエナの部屋から灯りが漏れているのが見えた。
そろそろと足音を消して近づいて、
そっとドアの隙間から覗いてみると、
ハナがベットに倒れ込んだのが見えた。
もう寝るんだろうか。
そのままずっと動かずにいるから、
もう寝てしまったのかと思いながら、
その場でじっとしていた。
近くで顔が見たくなって、部屋に入った。
ハナのベットの傍に行き、
じっとその顔を見つめる。
久しぶりにじっくり見る顔には、
少し疲れが滲んでいる。
きっと作業が大変なんだろうな。
僕にしてあげられることは何も無いのが、
少し歯がゆい。
柔らかいハナの髪の毛に触れる。
すると、
ハナは少し目を開けて、
なぜここにいるのか、と呟くように言う。
でも決して独り言のようではなくて、
夢を見ているとでも言うような雰囲気で。
その声はとても優しくて、
僕を割れ物のように扱うようだった。
僕は少し考えたあと、
とだけ言った。
これは僕の気持ちだけど。
ハナは薄く開いていた目をもう少しだけ開けて、
驚いているようにも見えた。
返事が返ってきたことに驚いたのか、
僕の言葉に驚いたのかは分からない。
それからハナはまだ目を少し閉じて、
と言った。
僕はハナの頭を相変わらず撫でながら、
と返した。
ハナはキョトンとした顔をしたけど、
やっぱり可愛くて、
今、これをハナが夢だと思っているだろうし、
自分の心を何でもうちあけてしまおうと思った。
いや、
ハナがどう思っていたとしても、
伝えたかった。
本当はこんな言い方したくなかったけど、
傷ついたんだから許されるだろう。
ただ、寂しかった。
それで、なんだか恥ずかしくもあった。
僕はこの先もずっとお前との未来を思い浮かべて生きてきたのに、
お前は違うかったんだ。
僕は、お前がずっと隣にいて、
くだらない話しながら笑いあって、
ご飯代のジャンケンに全力をかけて、
たまに買い物に行ったり、
映画を一緒に見るこの日常が、
ずっと続いていくんだと思ってた。
思い描いていた未来が覆って、
僕の胸の中には、
苦くて苦しい重いだけがいつまでも残っている。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!