第54話

♡.54
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2026/02/19 23:00 更新
引っ越しから数週間。真新しい床の匂いも少しずつ馴染み、生活の動線が整い始めた頃、約束通り「2時だとか」の面々が新居に姿を現した。


玄関のチャイムが鳴ると、それまでの穏やかな日常が塗り替えられるような、独特の活気が部屋に流れ込んでくる。
ローレンさんはリビングに入るなり、腰に手を当てて部屋を見渡した。かつてのマンションのベランダからは見えなかった、広く開けた夜景。

その視線は、雲雀くんが過去の痛みを越えて、ようやく手にした「安らぎの拠点」を値踏みするように、けれど温かく検分しているかのようだった。
lrn
へぇ。ここ、日当たりもいいし、静かでいい場所じゃん
独り言のようなその言葉に、雲雀くんが安堵したように眉を下げる。
wtri
そうですね、ロレさん。
あのベランダがあったから俺、あなたと出会えたんで……あそこを離れるのは正直少し寂しかったですけど

不破さんがお祝いに持ってきた間接照明が、部屋の隅で柔らかな琥珀色の光を放ち始める。彼は私に「雲雀、わがまま言うてへん?」と茶目っ気たっぷりに微笑みかけながらも、時折、雲雀くんの顔を覗き込むように見ていた。
fw
ヒバ、真っ直ぐすぎて空回りすることもあるけど……根はええ奴やから

酒が進むにつれ、イブさんの言葉も少しずつ熱を帯びていく。彼はグラスを傾けながら、かつてベランダで背中を丸めていた雲雀くんの姿を思い出しているようだった。
ibrhm
あの日あなたさんが隣にいてくれなきゃ、今のヒバの顔はなかったな。…ヒバ、あの頃の自分に感謝しなよ
wtri
わかってます。
……本当に、感謝してるんです

テーブルの下で、雲雀くんがそっと私の手を握りしめた。少しだけ指先が震えているのは、自らの選択に対する責任の重さを噛み締めているからだろう。
lrn
あなたさん、ヒバが粗相したらいつでも俺達に連絡して。ヒバのベランダでグダってた頃の弱み、俺達が全部握ってるから
wtri
ロレさん!その話はもう禁止ですって!
リビングは一気に賑やか……というより、嵐のような騒がしさに包まれた。大好きな雲雀くんと、雲雀くんの事を大切に思っている人と囲む食卓は、賑やかな中にもどこか暖かさが混ざっていて、それだけで私の心の中はとても穏やかな気持ちでいっぱいだった。







夜が更け、ローレンさんが静かに口を開いた時、部屋の空気が一段と引き締まった。
彼は雲雀くんを真っ直ぐに見据え、一言一言を置くように語りかけた。
lrn
ヒバ。同棲ってのはさ、ただ一緒に住むってことじゃねえぞ。……あなたさんの人生の貴重な時間を、お前が預かってるんだ

ローレンさんの言葉には、いつもの軽快な茶化しは微塵もなかった。
lrn
中途半端な覚悟で、大切な人を自分の領域に連れ出してきたわけじゃねえだろ。……あなたさんを不安にさせるような真似だけは、絶対にするな。俺らは、お前だけじゃなくて、あなたさんの味方でもあるからな

その言葉は、あの日水漏れに戸惑う私を「俺の部屋に来なよ」と救い上げた、雲雀くんのあの日の勇気への問いかけでもあった。
wtri
わかってます。……俺、あなたを幸せにするために、ここに来たんです。……絶対に、後悔させない男になります

雲雀くんは、隣に座る私の手を、テーブルの下で力強く握りしめた。
その掌の温かさと、僅かな震えが、彼の覚悟の深さを物語っていた。彼の誓いは、もはや若さゆえの熱情ではなく、人生を共にする男としての確かな覚悟へと昇華されていた。
fw
……ま、固い話はここまでや! 今日はお祝い!

不破さんがパンと手を叩き、明るい声でグラスを掲げる。
fw
あなたちゃん、これからもヒバをよろしくね。……ヒバ、たまに情けないとこもあるけど、あなたちゃんの前では一番カッコいい男でありたいと思ってるはずやから
あなた
はい。私も、雲雀くんと一緒に成長していきたいと思っています

先輩たちはその後、昔の失敗談を笑い話に昇華させながら賑やかに夜を過ごし、「次はもっと良い酒持ってくるわ」と、嵐のように去っていった。


静まり返ったリビング。不破さんがくれた照明の柔らかな光が、二人の新居を優しく照らしている。
wtri
ごめんね。みんなに、あんなに言わせちゃって

雲雀くんが、私の肩に顔を寄せて甘えるように呟く。
あなた
ううん。みんな、雲雀くんのことが大好きで、私たちのことを本当に大切に思ってくれてるのが伝わってきたよ
wtri
頑張るよ。……あなたに、俺を選んで良かったって一生思わせるから

夜の静寂の中、重なり合う体温。

ベランダ越しに手を伸ばしていたあの頃の私たちはもういない。


一つのドアの中で、同じ未来を見据えて歩き出した二人の夜は、どこまでも深く、温かに更けていった。

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