隠の人が焦った顔で何回も竈門炭治郎の体を揺する。でも炭治郎は微動だにしない。まるで聞こえていないようだ。
まるで軽い雑談でもするかのように、師範は微笑んでいた。
この場が命の行き場を決める裁きの場だなんて、忘れてしまいそうになるほど。
命の関わる話のはずなのに、笑顔で言葉を交わしている。
一人は泣いているが
この三人は本当に斬るつもりだろう。
彼の声は、頭上から落ちてきた。
鋭く、冷たく、そしてどこか絡みつくような調子で。
見上げれば、木の枝の上に寝転ぶようにして、伊黒さんがこちらを見下ろしていた。
伊黒さんの刺すような言葉が飛んできても、冨岡さんは反論もせず、眉ひとつ動かさなかった。
肺いっぱいに空気を吸い込んで、喉につまった息が酷い咳になっているようだ。
炭治郎のそばに静かに歩み寄り、そっと片膝を地につけた。
差し出された水にすがるように、炭治郎はただ、静かに水を口にしていた。
炭治郎の話を、すぐには信じることができなかった。
鬼にも感情があり、苦しみがある。悲しい生き物だ
だからといって、人を襲わない鬼が存在する、と言われても……にわかには受け入れがたい。
どれほど意志を持っていても、食欲という本能はそれを簡単に裏切る。
炭治郎の言葉を否定したくないけれど、簡単に信じるわけにもいかなかった。
隠の一人が、不死川さんの動きに気づいた瞬間、目を見開いた。
その視線の先、不死川さんはある箱を無造作に掴みあげていた。
箱からは、なんとも言えない異質な気配が漂っていた。
中に何があるのかは分からない。ただ、胸の奥が少しだけざわついた。
焦りと戸惑いが、隠の顔に浮かぶ。額に滲んだ汗が、冷たい空気の中光って見えた。
不死川さんの手の中で、あの箱がぐらりと傾いた。
……いや、違う。傾いたんじゃない。
あれは力を込めて…持ち上げた。
次の瞬間、チャキ、と短く刀が鳴った。箱に向かって、躊躇なく────
間に合わなかった。ほんの一瞬で鋭い音と共に、刃が箱の中に突き立てられた。
血が、見えた。
箱の隙間からボタボタと流れ落ちていく。
炭治郎は刺された箱を見て、何かが壊れたように立ち上がった。身体の痛みなんて関係ないとでも言うように、不死川さんへ向かって走っていく。
炭治郎が走る。血の気の引いた顔のまま、まっすぐに。
止める暇なんてなかった。いや、止めようとすら思わなかった。
ガッ
鈍い音が響いた。頭がぶつかる音なんて久しぶりに聞いた。
炭治郎が、ためらいもなく額をぶつけていた。不死川さんの顔面に、真正面から。
頭突き。まさか、そんな選択をするなんて。
思わず一歩、前へ出てしまった。
不死川さんが大きく仰け反る。
ほんの一瞬、全員の時間が止まったように感じた。
なのです(՞ . .՞)更新、遅くなって本当にすみません😭🙏💦
夏休みに入って、ようやく帰省期間になったので、お話作りにちゃんと取り組めそうです!!今回のお話は原作通りになっているので、自分がちゃんと考えた部分は少ないんですけど、漫画を文字に起こすのは難しかったです( ˘•ω•˘ )
鬼の血と隊士の魂、十話お読みいただきありがとうございました!
♡5➕☆138→🆙













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。