秋野さん。連れてきたよ、茅華。
え。連れてきちゃったの。
初めまして。佐藤茅華と言います。翔人から話は聞きました。会っていきなりで本当に申し訳ないんですけど、秋野さん、水泳部に入部してください!
秋野さんは、困ったように頭をかいた。
申し訳ないんだけど、今のところ入部する気はないの。私、佐藤さんのこともよく知らないし、どれくらいの熱で言ってるのかも分からないから。
秋野さんが言っていることも間違いではない。
私ね、中学の時は水泳部だったの。それなりにいい成績も残してたと思うし。でも辞めた。
問題を起こしたって、話か。
私ね、いじめられてたの。
え?
まぁ、いじめって言ってもそこまで酷くないよ。暴力とかはなかったし。せいぜい物がいくつか無くなる程度。
いじめに酷いも酷くないもないだろ。
まぁ、でも私も、話せば分かり合えると思ってたし、水泳って個人競技に見られがちだけどチームで戦う場面も結構あるから、いつかは1つになれると思ってた。でもダメだった。だから、最後に言いたいこと言って辞めてやろうと思ったら意外と大事になっちゃって。あっちは私以外、全員で口裏合わせて私が全部悪いことにされて。
酷い……。
だからといって、辞めたことも言いたいこと全部言って喧嘩になったのも、後悔はしてない。ただ、もう部活はしないし、人は信用しないって決めた。
やっぱり、三日月だった。
最初から鋭く、孤独な存在じゃなかった。
元を辿れば、夜道を明るく照らす、満ち満ちた満月だったんだ。
佐藤茅華。小学生の頃に水原璃恵子選手に憧れて水泳を始めた。好きな食べ物は、アボガドとホタテ。嫌いな食べ物は辛いもの全般。
待って待って、急に何?
自己紹介しようと思って。
えっと、なんで?
もちろん、こんな簡単な情報で私の事を分かってって言うつもりも、信用してって言うつもりもないけど、これから信用してもらう上で、最初の1歩になれば良いなと思ったの。
何となく、茅華が言いたいことは分かる気がする。
でも、最初の1歩とか言ってられるほど時間もないから、ここから先は、入部してから信用していってほしい。
……。
信用できないって思ったら退部していい。そう言わないのは、絶対信用させてみせるっていうこいつの自信だと思う。今は、その自信を汲んでやって欲しい。
はぁ。分かったよ。断ってもどうせ、また毎日来る気でしょ。
もちろん。
秋野さんはまた、ため息をつくと、
本当、恐ろしいやつだな。
そう言って、笑った。
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