第19話

19話
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2023/02/09 11:00
『ヒミツ:助けて』

そのメッセージが来たのは、ちょうど茅華達が部活設立の書類を先生に提出し終わった時だった。
僕は勝也と一緒に、茅華が職員室から出てくるのを待っていた。
端谷翔人
端谷翔人
これって、お前の?
内海勝也
内海勝也
いや、違うと思うけど、助けて欲しいことなんて割とたくさんあるだろ。課題終わんないとか。
端谷翔人
端谷翔人
まぁそうか。茅華にも聞いてみよ。
勝也の言う通りだと思っていた。
そんな大したことではないと高を括っていた。
それが大間違いだと、この時は微塵も思わずに。
佐藤茅華
佐藤茅華
え?助けて?あ、ほんとだ。きてるね。んー。私は今のところ助けて欲しいとかはないなぁ。
端谷翔人
端谷翔人
まぁ、ヒミツなんだし、言いたくないことだもんなぁ。無理やり聞くのも良くないか。
内海勝也
内海勝也
そうだな〜。
端谷翔人
端谷翔人
ほんとに助けて欲しい時は言えよ2人とも。
内海勝也
内海勝也
翔人もだぞ。
端谷翔人
端谷翔人
っていうか茅華、水泳部どうだった?
佐藤茅華
佐藤茅華
ばっちり!先生たち、あんまり良い顔しなかったけど、鈴香ちゃんが何か文句でもありますか?って!めっちゃかっこよかったんだよ!
なんだか、このまま茅華と秋野さんは良い友達になれそうで少し安心する。


それからは何事もなく、それぞれがそれぞれの日々を過ごした。
勝也も茅華も秋野さんも、部活に励んでいる。
『ヒミツ:助けて』
のことなんてみんな忘れていた頃。
スマホにまた、メッセージが来た。

『ヒミツ:翔人、助けてくれ』


勝也に急いで電話をかける。
端谷翔人
端谷翔人
なぁ勝也!大丈夫か!?
内海勝也
内海勝也
あぁ、またヒミツ?俺は大丈夫だって。
端谷翔人
端谷翔人
2回もくるなんて今までなかっただろ?なんかあるなら言ってくれよ。友達だろ?
内海勝也
内海勝也
だから、大丈夫だから。何にもないよ。
勝也の語気が強まる。
端谷翔人
端谷翔人
なぁ、勝也、僕は力になりたいだけなんだよ。
内海勝也
内海勝也
それは分かってるよ。でも、大丈夫。大丈夫なんだよ。
自分に言い聞かせるように呟く勝也の声は少し震えている。
端谷翔人
端谷翔人
次に何かおかしいと思ったら問答無用で動くからな。
内海勝也
内海勝也
あぁ。何も無いから。大丈夫。
こんなの、僕じゃなくても嫌な予感で溢れる。
そう思った次の日、
昼休みが始まった瞬間、
プレンドから目を疑うLIMEが届いた。

『ヒミツ:いじめられている』

僕は教室を飛び出した。
そのまままっすぐ勝也のクラスへ行く。
しかし、勝也の姿は既に無かった。
端谷翔人
端谷翔人
茅華。
茅華に電話をかける。
佐藤茅華
佐藤茅華
ねぇ!あれって、翔人じゃないよね!?
端谷翔人
端谷翔人
多分、勝也のことだと思う。今、勝也のクラス来たんだけど、どこにも居なくて。
佐藤茅華
佐藤茅華
とりあえず、探してみようか。
2人で校内を手分けして探す。
今までプレンドのヒミツが、間違っていたことはない。
だけど、今回ばかりは……
今回ばかりは、何かの間違いであってくれ。
勝也が苦しんでいるのに、僕は……、
僕は何を呑気に笑っていたんだ。
1階から4階までくまなく探したが、勝也はどこにもいない。
まさかと思い、離れにある体育館へと足を進める。
体育館の扉を開けると、そこには勝也がいた。

キーンコーン

昼休みが終わるチャイムが鳴る。
だがそんなものはまったく耳に届いていないように、勝也は体育館の真ん中で、
じっとうずくまっていた。

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