『ヒミツ:助けて』
そのメッセージが来たのは、ちょうど茅華達が部活設立の書類を先生に提出し終わった時だった。
僕は勝也と一緒に、茅華が職員室から出てくるのを待っていた。
勝也の言う通りだと思っていた。
そんな大したことではないと高を括っていた。
それが大間違いだと、この時は微塵も思わずに。
なんだか、このまま茅華と秋野さんは良い友達になれそうで少し安心する。
それからは何事もなく、それぞれがそれぞれの日々を過ごした。
勝也も茅華も秋野さんも、部活に励んでいる。
『ヒミツ:助けて』
のことなんてみんな忘れていた頃。
スマホにまた、メッセージが来た。
『ヒミツ:翔人、助けてくれ』
勝也に急いで電話をかける。
勝也の語気が強まる。
自分に言い聞かせるように呟く勝也の声は少し震えている。
こんなの、僕じゃなくても嫌な予感で溢れる。
そう思った次の日、
昼休みが始まった瞬間、
プレンドから目を疑うLIMEが届いた。
『ヒミツ:いじめられている』
僕は教室を飛び出した。
そのまままっすぐ勝也のクラスへ行く。
しかし、勝也の姿は既に無かった。
茅華に電話をかける。
2人で校内を手分けして探す。
今までプレンドのヒミツが、間違っていたことはない。
だけど、今回ばかりは……
今回ばかりは、何かの間違いであってくれ。
勝也が苦しんでいるのに、僕は……、
僕は何を呑気に笑っていたんだ。
1階から4階までくまなく探したが、勝也はどこにもいない。
まさかと思い、離れにある体育館へと足を進める。
体育館の扉を開けると、そこには勝也がいた。
キーンコーン
昼休みが終わるチャイムが鳴る。
だがそんなものはまったく耳に届いていないように、勝也は体育館の真ん中で、
じっとうずくまっていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。