キム・スンミン 17歳
ただの趣味、心から楽しく思えるもの、それが
自分の1等賞の旗を掲げる事になるというのは、
物凄くかけがえのないもので、その分もう後には
戻れないのだと深く悟る1日が今日も始まる。
弱音は吐かないように、溜め息は付かないように
全てに感謝するように、謙虚にそして朗らかに。
ボーカルという言葉が僕の身体を締め付けて来る
冬空の中、まだ誰にも届けられない弱々しくて
震えた声量で窓の外から社会に飛んでいってくれ
と願ってしまう自分は何処となくいる。
歌って、歌って、時には握り締めたペンを、
貯めてきた結晶の上でスラスラと動かして、
学んだ事を少しずつ、そして着実に身に付ける。
そうしていると、さっきまでは認めて下さいと
頭を垂れていた身体はそっぽを向いてしまって、
自分自身で謝罪会見を開いて前言撤回。
やっぱり、こんなものを世間様に見せるのは
恐ろしくて堪らず、少しの欲が出ては結局、
また元の自分へと戻り、変身が魔法が解ける。
でも解けてしまっても、また僕は走る為に
脚を踏ん張って進めなければならないくらい、
僕にはもうタイムリミットがないのだ。
思わず咄嗟に出てしまったその2文字は、
傍から見れば王子様と言われる人の艶やかな目も
ぎょっと丸くさせてしまうらしい。
あからさまに拗ねているパボを隣に仕方なく
置いていると、あ!そういえばと表情豊かに
さっきとはまた違った驚き顔を披露する。
どうやら、やっと僕のもとに来た理由を今更
思い出したらしい。
なにが?と主語のない文を咄嗟にツッコむと、
練習生が!と、これまた国語力ゼロの回答、
今度はどんな?だったりの修飾語が全くない。
まあでも、別に今日じゃなくても挨拶なんて
出来るし、ライバルになんてこんな僕が敵視
される訳もないので、ふいとそっぽを向いた先。
愛嬌良く聞かれた事をスイスイと答えるその人に
なんだか惹かれてしまった僕は、パボが作った
パボな罠にまんまと引っ掛かってしまった。
クラクラと夢を見せられる様に、僕はそのまま
立ち止まってしまって、気が付けば練習生伝統の
パフォーマンスを見る羽目に。
生唾をゴクンと飲んで、他の先輩が音源を
掛けた瞬間世界がグラッと傾いて、綺麗めな
格好からは全く持って誰もが想像出来なかった
意思を感じるその人にしか出せないダンスが。
ただの練習室の照明だったものが、あの人が
踊り出すと煌めきが狂った様に倍増する。
それが多分、この勘違いの始まり______。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。