第58話

私とラト
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2025/05/24 09:00 更新


ある日ぽっちゃり猫を助けたら



よその世界の執事の主になった







これは 私と執事たちのお話













フルーレ
ラト!!



ミヤジの処置も落ち着いて、 

やれやれと思った矢先、


ラトが真っ黒いモヤモヤ全開でぱたりと倒れた。



ばたーんっじゃなくてぱたり、だ。




なんかお姫さまみたいな可憐な倒れ方で

泣いて心配しているフルーレには悪いが

ヒロインかっと衝撃を受けている。




ミヤジといいラトといい

真のヒロインである私を差し置いてヒロイン過ぎないか?





ムー
呑気なことを言ってる場合ではありませんよ主、さぁ早く心の中に入って話を進めるのです



あなた
・・・・黒いのもだいぶ雑になってきたな





ムー、もとい黒猫に

さぁさぁっ!と肉球でぺちぺちされて

目を閉じてモヤに包まれているラトを覗き込む。





本当はミヤジを呼んだほうがいい気がするのだが

いま叩き起こしたらルカスにマジ怒りされるだろうし

さすがに私もそこまで鬼ではない。



涙目でラトに縋って、

こちらもヒロインぽいフルーレの手をぎゅっと握った。




あなた
フルーレ、ラトを取り返しにいこう


フルーレ
っ・・・・はいっ!




ベリアン
っあなた様!!




ぎゅっと握り返したフルーレに頷いて

ラトに手を伸ばせば、

こちらにかけてきたベリアンに手を取られる。


なんぞ?と見上げれば

切羽詰まった様子のベリアンが口を開いた。




ベリアン
あのっ・・・私も一緒に行かせてください



あなた
それは構わないが・・・・





ベリアン、ラトと仲良し度高かったっけ?




うっかり口に出したら泣いちゃうかもしれないので

内心だけで続けて首を傾げる。




もちろん勧誘したり指導はしているだろうけど

あんまりふたりだけで話している印象がないのだが。





ムー
・・・・良いでしょう、さぁ主・・・手を



あなた
・・・・・わかった、
ベリアン、フルーレ私を離すなよ








ちりんと遠くで鈴の音がなって

一瞬で目の前が真っ暗になる。



ふと気づけば薄暗い牢屋の前に立っていて

中で傷だらけの幼いこどもたちが

息を顰めて隅で身を寄せあっている。


ガチャンと鍵の開く音がして、

ボロボロの幼いラトがふらふらと牢屋に入ってきた。



目の前にいる私は見えていないラトは

無気力な子どもたちに必死に

逃げる為の作戦を伝えているが

さっきラトの横に現れた男の子、アレクが

光のない目でラトに首を振る。


ひとりでも逃げられるのに

アレクや他の子も連れて逃げようとするラトに


伸ばした手は 






空を切った。





ラト
っ・・・アレク・・くっ・・!



火の手が上がり、煙が流れ

兵士や研究者の怒号が近づいてきて

泣きながらラトがひとり、脱獄する。




場面が変わり、

薄暗い教会の前でラトが声をあげる。


必死にドアを叩いて呼んでいるラトに

母と呼ばれたシスターはドアを開けもせずに拒絶した。



シスターに自分たちが、

他の孤児たちが売られていたことを知ったラトは

シスターも、教会も全てを燃やして

ただただ、満月の下で泣いていた。





あなた
ラト・・・・・


獣のような咆哮をあげて泣くラトの頭を

両手できゅ・・と抱きかかえる。




これはラトの過去で

何も手出しは出来ないのだろうけども



あなた
ラト、ひとりでがんばったな





ふと顔をあげたラトの瞼に口付けを落とせば



ぱちりとラトと目があった気がした。















ベリアン
あなた様・・あなた様!



あなた
・・・・ベリアン
フルーレ
あなた様っ大丈夫ですか・・・?
ベリアン
良かったです・・・虚空を見つめて反応がないから目を開けたまま寝てしまったのかと思いました!



あなた
あぁ、心配かけ・・・・・ん?
おいそれちゃんと心配してるか?



ベリアン
それにしても・・・本当に心の中なんですね



なんかいまディスられてなかったか?




釈然としないが

そのまま進めるベリアンとフルーレに

むむむ、と首を傾げれば

奥の黒いモヤのほうからラトの声が聞こえた。




ラト
う・・くっ、離してくださいっ


???
ラト兄ちゃんどうしちゃったの?
さっきまであんなに怒ってくれてたのに・・



フルーレ
っラトの声だ!
ベリアン
もしやあのモヤの中にラトくんが・・?




フルーレ
ラト!ラト!・・聞こえてないの!?


あなた
ふむ・・・・
モヤでこちらの音が聞こえてないのか?




モヤから出せばいいんだな?








ベリアン
あなた様!?




ぴょんっと一足飛びでモヤに飛び込んで

ラトの気配だけに手を伸ばす。




さっきすり抜けた手は、




今度こそラトの手を掴んだ。





ラト
っ・・・・・
???
なっ・・・!?





あなた
ラト 帰るぞ




ぐいっと引っ張って

ぎゅっと胸にラトの頭を抱える。



ラト
っ・・・あなた・・




背中にまわされたラトの両手に

治りきっていない斬られた傷が痛んだけれど、

無視してすり、と胸元にあるラトの頭に頬を寄せる。



周囲に纏わりついていた黒いモヤが分散して

ベリアンとフルーレ、

そしてアレクが私とラトの周りに見えた。




フルーレ
あなた様!ラト!
???
なっ、なんで・・・!
ちっ、邪魔をするなぁ!!



ラト
・・・・アレク、ダメですよ




きゅう、と背中の腕の力が強くなり

ラトがゆっくり顔をアレクにむける。



じゃら、と小さく音がして、

アレクの姿をした悪魔の足首に鎖が浮きでた。




ラト
ミヤジ先生もフルーレも私を裏切らない
ミヤジ先生やあなた様は、お母様とは違うんです
???
う、嘘だ!ラト兄ちゃんは騙されてるんだよ!いつか絶対に捨てられるよ!!




ラト
いいえ、ミヤジ先生は私のために命も差し出してくれました・・・あなた様も、
あなた
ん?




ラト
・・・・ずっと・・
あの時からそばにいてくれたんですね




私を見上げて微笑ったラトが

ふわりと口を塞ぐ。


ちゅう、と吸い付いて離れたラトは

鼻が触れそうなほど寄せた距離で目を細めた。





ラト
全部思い出しました・・・・



???
ラト兄ちゃんっ!・・・・あ・・っ!?




ラト
だから、私は貴方と一緒に行けません
私の心臓も、魂も、死も、全てあなた様のものなんですから





じゃらじゃらと太い鎖が

生き物のように悪魔に巻き付いて

アレクの姿がぐにゃりと歪む。



立ち上がったラトが

悪魔に向かってにこりと微笑った。




ラト
さよならアレク
あなたは私の幻覚、もう消えて結構ですよ



???
くそ・・くそっ・・あともう少しだったのに・・!計画は失敗・・もうアレクを演じる必要はないか・・・
ラト
アレク?



ベリアン
あ、あなたはいったい・・・・






急に笑い出した悪魔にベリアンとフルーレが構える。



ストラスと名乗った悪魔は

じゃらじゃらと巻き付く鎖に平気な顔をしたまま

スッと目を細めてラトと私を睨んだ。



ストラス
あーぁ・・あと少しでラト・バッカが死んで自由になれるはずだったのに
ラト
アレクの姿でそんなこと言わないでください
アレクは、私の弟はそんなこと言いません
ストラス
ぐっ・・・



ベリアン
・・・あの鎖は悪魔を縛る鎖でしょう、
我々悪魔執事は悪魔をその身に縛りつけて契約します



ラトが悪魔化を乗りきった証だと

顔を綻ばせるベリアンと、ホッとした顔のフルーレに

ラトから離れて、

鎖が首まで上がってきたストラスを覗き込んだ。




あなた
自由がいいなら、なんで最初にラトの契約に応えたんだ?



ストラス
・・・・そんなの、アイツの絶望が美味かったからに決まってるだろ
ラト
しつこいですね、私はあなた様たちがいるなら絶望しません、さっさと消えてくださいっ


ストラス
・・・・・・・へぇ
これで終わりだと思うなよ・・今度こそお前を絶望に付き落として殺してやる
あなた
・・・!






じゃら、と重たい鎖の音がして

かつんと口に冷たい唇が押し付けられる。


ざわりと後ろで殺気が膨れ上がり

金色の目が三日月のように細まった。





あなた
っ・・・



ラト
あなた様っ・・・!




ガリッと音がして唇に痛みが走る。




煙のように鎖ごと消えたストラスに

ごしごしと口の血を拭えば、

後ろから抱きついてきたラトが虚空を睨みつけて唸った。




ラト
次に出てきたら絶対に壊してやる・・・っ
フルーレ
ラト!あなた様!




駆け寄ってきたフルーレに

声をかけようと口を開けば、



世界が暗転した。





















ユーハン
・・・ま、・・・様っ





あなた
・・・・・・ん・・




ふわりと意識が浮上して

薄暗い室内に赤色が浮かび上がる。

少しかたい寝心地に頭を動かせば

同じように目を覚ました様子のラト、

フルーレ、そしてベリアンが起き上がった。



反対側をみれば

ルカスのところに横たわっているミヤジも

規則的な呼吸をしていて

もう大丈夫か、と目を閉じ
ムー
あなた様ぁぁぁぁぁあっ!!
あなた
むぎゅっ・・!!





顔に降ってきたもふもふキューティクルに

口も鼻も塞がれて呼吸が止まる。



こら、ダメですよと

優しく怒るユーハンの声と同時に

頭に張り付いている毛玉を引き剥がした。




ムー
良かったですぅ〜!気付いたらみんな倒れてるしあなた様怪我してるのに誰も突っ込まないしっ!!
あなた
ん、よく気付いたな?
ムー
だって僕猫ですよ!!匂いで気付きます!




ふんすと胸を張るムーに

よしよしと頭を撫でれば

じゃり、と真横に見慣れた足が立った。





あなた
・・・・・・なんだルカス







ルカス
あなた様・・・・・?




あなた
む?



ひやりと室内の温度が下がり

笑顔のルカスがユーハンを押しのけて膝をつく。


ものすごく低音ボイスで

どこですか、と問われたので

よいしょ、と体を動かした。








あなた
血は止まってると思うし
たいしたことないぞ?



ルカス
それは私が決め・・きゃあーーー!!


あなた
わっ・・・?!



ゴロンとうつ伏せになれば

急に野太い乙女な悲鳴が上がって

うつ伏せのまま両手にぐっと体重がかかった。


・・・・ミヤジの時より扱い雑じゃないか?






ルカス
ユーハンくん!絶対に逃がさないように押さえといてくださいっ
ユーハン
え?!は、はい・・・っあの・ですが・・



あなた
っひゃあ?!




頭のほうにいたユーハンに両手を押さえられて

びりっと背中の服を破られる。

冷たい空気に鳥肌が立って

ぎゅっと目を閉じれば

ルカスの熱い手のひらが背中から腰にかけて滑って

勢いのわりに丁寧に傷口を消毒された。





ルカス
痛いのが嫌なら抵抗せず力を抜いていてくださいね



あなた
ル、ルカス・・っん・・・ぅ・・ぁ



ルカス
ほら、痛くないでしょう・・?


あなた
や・・・ぃ・・痛ぃ・・・っ








ユーハン
・・・・っル、ルカスさん!
 
ベリアン
ルカスさん・・・遊んでませんか?
フルーレ
・・・・・・っ
ラト
おやどうしたんですかフルーレ、顔がトマトみたいに真っ赤ですよ





消毒よりユーハンに握りしめられてる

腕のほうが痛いけどな!?




私が冷たい消毒液とピリピリした痛みに耐えてるのに

頭上で緊張感のない会話をしているのが腹立たしいっ









あなた
うー・・・ルカスめっ
ミヤジにはめっちゃ丁寧に手当てしたくせに





空のてっぺんを過ぎた満月の下を

ラトの背中に乗ってのんびり近くの町までむかう。


ベリアンが先導するあとを

ルカスとユーハンがミヤジを担いで続き

私を背負ったラトの隣を

フルーレが振り返りながら歩く。



そういえば満月だな、と

ラトの肩に顔を乗せて覗き込めば

顔を私に向けたラトがくふふと小さく笑った。




あなた
ラト、満月だぞ
ラト
はい、綺麗ですね
フルーレ
・・・ラト、満月・・大丈夫になったの?



目をぱちりと瞬いたフルーレに

私を支えているラトの手がきゅ、と強まる。




ラト
はい、満月は・・あなた様を思い出すので
・・・・・・好きですよ







凪いだ海みたいな目のラトに








きゅ、と首に抱きついた。



















主様はうじうじに厳しいので
自力で悪魔化を解くラトの好感度急上昇です。




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